東日本大震災後に、「今、被災地が抱える問題は未来の日本の姿だ。時計の針が一気に進んだだけだ」と語る首長さんたちに何人も会った。「津波と原発事故により、それまで見えなかった社会構造の問題点が顕在化し、加速したのだ」といわれた。震災と原発事故を機に、村の高齢化と過疎化の針が一気に何十年も進んでしまったのだ、と。

 東日本大震災のとき、東京の街の電気は消え、みなが被災地を思いやった。家族、仕事、家、それがほんの一瞬で消えてしまう理不尽を目の当たりにし、何が大切なのか?幸せとは何か?を考えた。

 だが、次第に記憶は薄れ、9年たった今、平穏な日常が繰り返されるということは、実は奇跡だったと気づかされる。

 だからこそ、今回「今」を書き残した次第である。

社会を広く自分事ととらえる視点を

 人は忘れる。でも、今のことは忘れちゃいけないのだ。

 イメージしてほしい。今、仕事を失った人たちが働いていた産業はどこか? 倒産している企業は、私たちの生活に何をもたらしてくれているか?

 医師の方、看護師さん、保健師さん、介護士さん、ヘルパーさん、のことを、「生活に必要」とされる産業で働く人たちのことを……。

 なんだか説教くさくなってしまって申し訳ないが、作られた社会の仕組みは「私たち」の選択でもあった。

 今までの私たちの生活を、今までの社会の仕組みを見直すことが、今「私たち」に課せられているのではないだろうか。これからの生き方を、「私」ではなく、「私たち」の問題として生きていく時がきたのだと思う。

定年後からの孤独入門』(SB新書)


新刊が発売になりました。役職定年、定年後再雇用なと゛「定年」に向き合って複雑な心持ちになったときに、いま一度生きる幸せとは何かを考える本です。
第1章 古戦場巡りで気づく“ぼっち”の世界
第2章 塩漬けおじさんが定年で失敗する理由
第3章 ボッチは定年前から始まっている
第4章 死ぬより怖い「ぼっち」の世界
第5章 人生に意味を作る

健康社会学と700人以上のフィールドワークで分かった「定年ぼっち」に負けない生き方をひもときます。

この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。