今の日本社会の仕組みは、高度成長期の「カタチ」を前提につくられたものを踏襲し続けている。1990年代を境に「家族のカタチ、雇用のカタチ、人口構成のカタチ」は大きく変わったのに、「カタチが変われば仕組みも変える」ことに目を向けなかった。あるいは、“普通の人”のことなどはなから頭になかったのか。

 昭和の「夫婦2人と子供2人」の4人家族モデルはことごとく壊れ、シングルマザーや独居老人が急増した。昭和の「正社員で長期雇用」という当たり前は崩れ、非正規雇用は4割になった。人口ピラミッドはカクテルグラス型になり、65歳以上が総人口に占める割合は1985年の10%から、2005年には20%と倍増した。

 ただし、そう、ただし1つだけ変わっていないことがある。

変わらぬ長期雇用の会社というモデルも崩壊へ

 「長期雇用の正社員の割合」はおおむね維持されている。意外に思うかもしれないけど、昭和の一般的な働くカタチと信じられている長期雇用の正社員の割合は変わっていないのだ。具体的には3割。昔も今も長期雇用の正社員は3割しかいないのだ。

 例えば、2017年5月に経産省の次官・若手プロジェクトが作成した文書、「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」では、昭和の一般的な生き方だった「新卒一括採用で就職し、定年まで勤め上げる人」の割合は1950年代生まれで34%、1980年代生まれで27%と推計している。

 高度成長期の一般的な働き方だと思われた会社員の割合は、働く人全体のたったの3割しかなかった。そして、若手プロジェクトが「昭和の遺物」と信じて止まなかったその割合は、若干減少しただけで、おおむね現在もキープされていたのだ。

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 要するに「長期雇用の正社員」の入り口のキャパは50年以上3割程度で、そこに入れなかった人たちが、低賃金で不安定な非正規やフリーランスとして働いている。

 新たに労働市場に加わった女性たち、60歳以上のシニア社員たち、小売店や家内工業を辞めて雇用労働者になった人たちなどの“新参者”は、会社員であって会社員じゃない。

 そして、ここ数年はやりの早期退職制度は、「長期雇用の正社員」という身分からのリストラであり、元会社員が増え続けているのが、今の「雇用のカタチ」だ。

 非正規雇用の人たちが、「社食は“社員さん”しか使えないんです」「“社員さん”しかリモートワークは許されてないんです」「“社員さん”しか時差通勤できません」と正社員を呼ぶのも、彼らが、会社員社会のよそ者=弱者であり、「集団の内部に存在する外部」だからだ。

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