さらに、3月30日(月)に東京都が開いた緊急会見に、クラスター対策班の西浦先生(北海道大学大学院教授)が同席し解説してくれたことで、「なぜ、もっと検査をしないのか?」という疑問も明らかになった。

 「今までどおりのPCR検査を行っていくということか? 抗体検査のような大規模な調査を行わないのか?」という記者の質問に対し、「PCRの患者数は、全感染者中の氷山の一角でしかないが、爆発的な患者数の増加がないことや、蓋然性が高いことを僕たちで確認している。抗体調査は、人口の何%が感染してるのかをリアルタイムで理解するために実施するもの。今警戒すべきは2~3日ごとに倍々で感染者が増え始めてないとことをしっかりと確認し、もし増えているということがあれば、速やかに対策を実施する必要がある」とした。

 その上で、「例えば、帰国者・接触者相談センターを通じて受診した外来患者数を見ると、発熱し電話相談をして受診した人の数が診断される前の段階で見られる。それが増加傾向にあるかどうかが見れるし、他にも多角的なデータを使って確認しつつ、その報告をする」と回答している。(注:3月30日時点の回答)

 つまり、今回のLINE調査は患者数の増加を確認するための「多角的なデータ」の1つだったのだ。

 大手メディアはこの記者会見の内容の「小池知事」の部分は繰り返し報じていたけど、それ以外はYouTubeなどを探して見るしかなかった。4月1日に政府の専門家会議が行った記者会見も同様である。専門家の先生たちはかなり踏み込んだ」「私たちが知るべき対策」を発言していたのに、テレビでの扱いは小さかった。「医療崩壊」という刺激的な言葉が、「感染爆発」「ロックダウン」という言葉とともに繰り返されてしまったのだ。

 記者会見の内容をすべて知りたい方は、厚労省のHPの「新型コロナウイルス感染 症について、こちらをご覧ください」から、「お知らせ」の「新型コロナウイルス 感染症対策の状況分析・提言」をクリックすれが見ることができるが、ここで示された対策は今日にも、発令されるであろう「緊急事態宣言」をきちんと理解するためにも有用なので、以下に掲載しておく。

自分ごとにするためにメディアの役割は大きい

「感染拡大警戒地域」──直近1週間に感染者が大幅に増加
・オーバーシュート(爆発的患者急増)を生じさせないよう「3つの条件が同時に重なる場」(換気の悪い密閉空間、人が密集している、近距離での会話や発声、以下「3つの密」)を避けるための取組(行動変容)を強く徹底。
・期間を明確にした外出自粛要請
・10名以上が集まる集会・イベントへの参加を避ける
・家族以外の多人数での会食などは行わない
・学校の一斉臨時休業も選択肢として検討すべきである

「感染確認地域」──感染者数が1週間前と比較して一定程度の増加幅に収まっている
・人の集まるイベントや「3つの密」を徹底的に回避する対策をしたうえで、感染拡大のリスクの低い活動については実施する
・屋内で50名以上が集まる集会・イベントへの参加は控える
・感染拡大の兆しが見られた場合、感染拡大のリスクの低い活動も含めて対応を更に検討する

「感染未確認地域」──直近の1週間に感染者が確認されていない
・屋外でのスポーツやスポーツ観戦、文化・芸術施設の利用、参加者が特定された地域イベントなどは、感染拡大リスクの判断を行い注意をしながら実施する
・その場合でも、「3つの密」を徹底的に回避する対策は不可欠

 上記を、日々感染者数を報じるときに繰り返し伝えることで、見ている人は「自分の行動」の参考になる。もちろん日々専門的な知見も更新されるので、場合によっては上記を修正することだってあるに違いない。イベントの人数制限の10人が5人になるかもしれないし、家族だけの会食もやめた方がよいということになるかもしれない。だからこそ、メディアが毎日伝える必要がある。

 もちろん情報を受け取る側=メディアの問題もあるだろう。

 このコラムが公開になる4月7日。日本は、東京は、そうなっているのだろう。政府、厚労省、メディアさま、どうか「透明性」を大切にしてください。刺激的な言葉だけを繰り返すのではなく、クラスター対策班を核とする専門家会議の先生たちが伝えたいことをきちんと伝えてください。

 よろしくお願いします。

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1ページ目のリンク先のURLを正しいものに修正しました。[2020/04/07 11:35]

『他人の足を引っぱる男たち』(日本経済新聞出版社)


権力者による不祥事、職場にあふれるメンタル問題、 日本男性の孤独――すべては「会社員という病」が 原因だった? “ジジイの壁”第2弾。
・なぜ、優秀な若者が組織で活躍できないのか?
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・なぜ、心根のゲスな権力者が多いのか?
そこに潜むのは、会社員の組織への過剰適応だった。 “ジジイ化”の元凶「会社員という病」をひもとく。

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