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 年代は前後するが、2014年に行われた「非正規第一世代」の氷河期世代を対象にした調査で、壮年非正規雇用者の15.9%が「お金がなくて病院に行くのを我慢したことがあった」と答えていることからも、“目に見えない格差”が身近に存在することが分かるはずだ(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「壮年非正規労働者の仕事と生活に関する研究」より)。

 そして、今。この時間にも、「大丈夫かなぁ」と不安を感じながらも病院にも検査にも行けない人がいる可能性はある。

 が、今回、私が最も危惧してるのは「この先」だ。

 既に、非正規やフリーランスの人たちの収入が激減したり、途切れたり、雇い止めにあうなど困窮している状況は伝えられているが、彼らはもともと“リソースの欠損”という、極めてストレスフルな状況に慢性的に苦しんでいる人たちだ(リソースについては後で説明する)。そして、今は「持てる人」の集団にいる人の中にも、ギリギリの“リソース”で生きている人たちがいる。

1万2000円の現金バラマキに効果はあるのか?

 政府は「厳しい状況の経済をV字回復させなければならない」として、国民1人当たり1万2000円以上の現金給付を検討しているようだが、こんなバラマキにいったいどんな効果があるのか。私には全く理解できない。

 まずは、社会経済的に弱い立場の人たちへの支援に集中すべきだ。だいたい「今後仕事はどうなるのだろう?ちゃんと稼げるのだろうか?」と不安定な状況にある非正規やフリーランス、利用者が激減している旅館やレストラン経営をしている人たちが1万2000円もらっても、焼け石に水だ。

 選挙対策ではなく本気の新型コロナ対策なら、困窮している人、先が見通せない人に集中的にお金を使わないと、“持たざる人”の心身はどんどんとむしばまれる。景気対策だのなんだのと言う前に、命を救うことが先決じゃないのか。

 これはあおっているわけでも、悲観的に考えているわけでもない。日本には“見えない格差”が確実に存在しているのだ。普通に暮らしている人の影で、普通に暮らせない人たちが確実に増えているのだ。そして、それは想像以上に深刻である。

 ここで集中的に支援しないと日本の土台は崩壊し、日本社会そのものが「自然死」するかもしれないのである。