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(写真:Shutterstock)

 「感染症は不平等のリトマス試験紙」──。

 これは米ミシガン大学の疫学の助教、ジョン・ゼルナー氏の言葉 である。

 先週、「ナショナル・ジオグラフィック」の記事で引用されたものだ。ここでは新型コロナウイルスの今回アウトブレイクや過去の研究から、医療従事者や介護職など特定の職業に就く人や、低所得者層の感染リスクと予防の難しさを伝えている。

 例えば、米国の新型コロナによる死者が、ワシントン州最大都市シアトルで多い最大の理由を、「ホームレスの多さにある」と分析。ホームレスの大半は屋外で寝起きし、多くが高齢者や慢性的な健康問題を抱えている人々のため重症化しやすいとした。

 また、低所得者は比較的混み合った環境で暮らし、未治療の基礎疾患があり、休めない仕事に就いてる人が多いと指摘。

 「家の中にこもるにしても、食料品店には行かなければなりません。では、食料品店で働いているのは誰でしょうか。必要なものをネットで注文すれば、外出せずに済むでしょう。しかし、誰がその荷物を運ぶのでしょうか」

 ゼルナー氏は、こう疑念を呈したという。

金のあるなしで命に格差の現実

 トランプ大統領が国家非常事態宣言をし、最大500億ドル(約5兆4000億円)の連邦政府予算を検査や治療の拡充に充てると発表したのも「医療保険未加入の人への無料検査、食料支援」を行うためだ。支援策には「2週間の有給疾病休暇」や「最大3カ月の有給介護休暇」「すべての学生ローンの利息の帳消し」など、低所得者層への幅広い救済策が予定されている。

 所得格差が医療格差に直結してる国ゆえの緊急支援策。そう捉えることができる。

 しかしながら、これは米国の話であって、米国の話だけではない。

 「何言ってるんだ!日本は国民皆保険だろ!」。そう思われる人もいるかもしれないけど日本も事情は同じ。“目に見えてない”だけだ。

 経済的理由から病院に行けない人は、2008年のリーマン・ショック以降、たびたび報告されてきた。2009年に全日本民主医療機関連合会が、加盟医療機関を対象に行った調査では、経済的な理由から受診が遅れ死亡に至った事例は、2009年の1年間だけで少なくとも47件もあった。

 2018年7月には、北海道民医連が、「2017年経済的事由による手遅れ死亡事例調査」の結果報告の記者会見を行い、「国民皆保険といわれながら、困窮する中で受診を控えて手遅れになるという事例が毎年発生している。金のあるなしによって、命に格差が持ち込まれることがあってはならない」と訴えた。

 調査結果によれば、2017年の道内の死亡事例63件のうち、男性が8割、年齢は50~70代が8割で、雇用形態は無職や非正規雇用が約7割だった。約半数が正規の保険証を持っていたのに、受診できずに亡くなっていたという。