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 ……にもかかわらず、それが全く生かされていない現実がある。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大防止策は、当初から「誰がリーダーシップを取っているのか?」が不明だったし、専門家会議を立ち上げるのも遅かった。

 安倍晋三首相自身が全国の小中高校などへの休校要請について、「直接、専門家の意見を伺ったものではない」と、専門家会議の提言に基づく決定ではないと明かしたり、記者会見でも記者の質問に答えずその場を去ったり、5日に発表された「中韓からの入国規制」については、政府対策本部の専門家会議メンバーの押谷仁・東北大教授が、困惑した様子で受け止め「まずは国内の対策に力を入れるべきではないか」と疑問視したと一部メディアで報じられている。

 本来、鍵を握るべき専門家の立場は? 生活者目線は? どこに行ってしまったのか。

 安倍首相の政治決断を「英断!」と評価する人もいるけど、納得いく説明もないままにトップダウンの発信だけが進んでいることが、余計な不安感や恐怖心、疑念、差別、偏見、間違った知識などにつながっている。

 確かに厚労省は、twitterやFacebookで発信を行っている。しかし、防止策の意思決定はどのように行われているのか? どこに双方向のプロセスがあるのか? 分からないことだらけだ。

一貫しない言動が続く政府とメディア

 当初、テレビに出演する専門家たちは「マスクは予防にならない」と口をそろえ、手洗いが最大の防止策と言っていたにもかかわらず、マスクを国が買い取り北海道の人々に配布した。

 その後、介護職員らでつくる労働組合が全国の介護事業所4043カ所への緊急調査を行い、マスクがすでにない事業所が約2割、訪問介護に限ると3割、在庫が2週間分以内の事業者は3分の2に達していると、政府にマスクの確保を訴えた。

 これにより政府は、「1人に1枚行きわたるようにする」と発表した。

 ところが突然、マイナンバーで買えるようにするだの、何だのと、「え? 今、それ??」という発信もあり、政府もメディアも右往左往する状態がまだまだ続いている。

 今からでも遅くない。せめて、新型インフルエンザのときの経験を生かした情報発信と対応をしてほしい。

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