さらに追い打ちをかけたのが『週4日勤務にするとか、時短勤務にすればいい。短くすれば楽だからいいでしょ?』という一言です。

 在宅勤務も時短勤務も、どちらも働き方改革の一環です。在宅は許可できないから、時短勤務をしろ、週4日勤務にしろというのは納得できません。

 時短勤務になると、その分収入は減少します。

 自分にやるべき仕事がないなら、そういった仕打ちも我慢するしかない。でも、僕には仕事があるんです。上司からは、在宅勤務申請の却下を知らされたときにも、『あと、振りたい仕事があるから、あとでお願いね』と言われたのです。

 時短勤務になっても、仕事が減るわけでもなければ、期限が延びるわけでもない。賃金だけが減るんです。

 一番苦労してるのは言葉に出せないけど、お金なんですよ。障害者も高齢者もお金がないと生活できません。障害者にも家族がいて、生活があることをどうしたら分かってもらえるのか。

 ただ、障害者雇用枠は優遇されている面があるのは事実なので、従うしかないと思っています」

米国では合理的配慮を徹底して義務化

 さて、いかがだろうか。

 改正障害者雇用促進法では、「合理的配慮」という文字がきちんと記されている。

 「合理的配慮(reasonable accommodation)」は、1990年に米国で制定された連邦法ADA(Americans with Disabilities Act)の中核にある概念で、「ここを配慮してくれれば、ちゃんと働けるよ」という考え方だ。

 例えば、企業側は基本的な合理的配慮として、「他の従業員(または顧客)からの障害に対する懸念や偏見への擁護」をしなければならないし、reasonable、accommodation、という単語が示すように、従業員が医療機関などの証明をベースに、「治療のため週3日は休みが必要」「自宅勤務が週2日は必要」などの声を上げれば、企業はその従業員に便宜を図らなければならない。

 米国では徹底して合理的配慮を義務にしているので、配慮にかかる費用が、企業を倒産させるほどのものであることが証明されない限り、免除されない。

 同時に、政府は企業の負担を減らす実効的な施策を行っている。

 企業向けの障害者雇用に関する無料コンサルティングサービス(Job Accommodation Network) に加え、修士号、博士号を持つ専門のコンサルタントが、依頼があれば、企業に出向き相談に乗る。

 年間60回以上のセミナーや研修会の実施、電話によるコンサルティングサービスなど、さまざまな方法で、国が企業をサポートしている。

 「障害者にとっての不合理」を個人ではなく「社会」の問題と考え、「自立」と「共存」を当然とする考え方がこういった政策を可能にしているのだ。

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