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(写真:Shutterstock)

 2020年が到来してしまった。

 新年早々「しまったとは何事だ!」と怒られそうだが、2013年にIOC(国際オリンピック委員会)のジャック・ロゲ氏が「TOKYO 2020」と書かれたフリップを掲げたのが、ついこの間のようで。「まだまだ先」が「今」となり、少々戸惑っている。

 しかも、2020年はこれまで何度も書いてきた通り、あちこちが「50代以上だらけ」になる未曽有の中高年があふれる時代の到来だ。

 大人(20歳以上)の「10人に6人」が50代以上で、40代以上に広げると「10人に8人」というリアルがどんなものなのか? 私には皆目見当がつかないのだが、色々な意味でかなり深刻な問題が生じることは間違いないだろう(参考コラム「現実、企業は50歳以上を“使う”しかないのだ」)。

 もっとも一番の心配は、社会や企業がこの超少子高齢化社会にリアリティーを持てていないのではないか?ということ。本気で中高年が社会の大半を占める時代の対策をやっているとは思えない。

 2019年末、日本人の国内出生数は86万4千人に急減し(前年比5.92%減)、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回ったことが分かった時にも、「驚異的な数字が出てしまった。相当思い切った手を打つことがどうしても必要だ」(衛藤晟一少子化担当相)などと、コメントするほどの認識の緩さだ。

 一体、何を今さらのたまっているのか。2020年には、私を含めた半数以上の女性が50歳以上の「出産不可能女性(←国の見解)になる」ということも以前から分かっていたのに、政府は1人で5人も6人も産まないと到底到達しない「希望出生率1.8」という不可解な目標を掲げてきた。

 少子化タスクフォースしかり、女性手帳しかり、婚活イベントしかり、トイレ大臣しかり。どれもこれも「あの~、それで子供産みたいって人マジで増えると思ってるんですか?」と突っ込みどころ満載の“キャンペーン”が繰り返され、どこをどう切り取っても、来る超少子高齢化社会に正面から向き合ってきたとは言い難い。

シニア社員の相次ぐリストラは企業のゆるやかな自殺

 一方、企業に至っては臭いものにはフタとでも言わんばかりの施策を繰り返している。

 昨年10月に第一報を伝えた通り(参考コラム「再来した大リストラ時代と『雇用流動化』礼賛の幻想」)、2019年1~11月の上場企業の早期・希望退職者の募集(または応募)が、1万人を突破。さらに、今年は味の素(100人程度)やファミリーマート(800人程度)など7社、計1500人が、バブル世代をターゲットに希望・早期退職を実施する方針を決定した。

 2019年12月に朝日新聞が45歳以上の大量リストラを発表し、退職金は上限6000万円という驚愕(きょうがく)の数字が報じられ話題になったが、6000万円払ってでもコスパの悪いシニア社員をたたき出したい。追い出し部屋は世間から叩かれ、低賃金で定年後雇用延長することへの裁判が増え、政府は定年を70歳まで引き上げる方針を出しているので、「今のうちに何とかしなきゃ!」「そうだよ!AIやITにもっと投資して、若い人の賃金を上げていい人材集めようぜ!」と、シニア切りに躍起になっている。実に残念なことだ。

 この先、切っても切っても増え続けるシニア社員を、企業はどうするつもりなのか?

 人員削減のような分かりやすいコストカットは、“目に見えない力”を育む土壌を自らの手で壊しているようなもの。短期的に救われても長い目で見ればアウト!いわば「企業のゆるやかな自殺」だ。

 労働力人口が減少している中で成長力を維持していくためには、シニア社員も含めたすべての社員がエイジレスに働くための多様な就業機会を提供し、彼らのやる気を引き出す経営を進める必要がある。にもかかわらず業績の良い企業が将来を見込んで続々と「お引き取りください!」攻勢に出ている現実を私は全くもって理解できない。