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(写真:shutterstock)

 ついに、パワハラをした男性会社員(30代)が、書類送検された。

 罪状は「自殺教唆の容疑」。亡くなったのは三菱電機の20代の新入社員の男性で、書類送検された会社員は教育主任だった。報道によると、新入社員の男性は、今年8月下旬に社員寮近くの公園で自らの命を絶った。現場には教育主任から「死ね」などと言われたことや、会社の人間関係が書かれたメモが残されていていたそうだ。

 教育主任が、8月下旬に行われる技術発表会に使う資料の書き直しを新入社員に求める際、かなり厳しい口調で迫っていたのを複数の社員が目撃していることが社内調査で明らかになっている。また、同僚たちの中には、亡くなった男性が「教育主任から『死ね』と言われた」と話しているのを聞いたと証言した人もいた。

 三菱電機の技術職や研究職では2014~17年、長時間労働などが原因で自殺者2人を含む5人が労災認定されている。「パワハラが日常的で自浄作用はない」と話す社員もいるという。

 ……いったい何度、このような悲劇が繰り返されるのだろう。

社員の自殺を責任者はどうとらえているのか

 自殺教唆は「もともとそうしようと思っていない人に自殺を決意させて、自殺させる」という犯罪で、自殺教唆罪の法定刑は、「6月以上7年以下の懲役または禁錮」(刑法202条)。

 今回書類送検された会社員は、「死ね」とは言ってないが、類似する言葉は言ったかもしれないとの趣旨の説明をしているそうだ。

 神戸地検は、刑事責任の有無を慎重に判断するとされているけど、起訴されようがされまいが亡くなった新入社員は戻ってこない。過労死は長時間労働の削減で防げるけど、過労自殺は長時間労働だけでなく、パワハラや仕事のプレッシャー、職場での人間関係などいくつかのストレス要因が重なり、生きる力が萎えた末の死だ。本当はもっと生きたい。もっとやりたいことだってある。その生きる力のエネルギーを劣悪な職場風土が奪うのだ。

 三菱電機は「新入社員が亡くなったことは事実だが、それ以上は捜査中なので差し控える」としているようだが、「会社の責任者出てこい!」と率直に思う。繰り返される過労死や過労自殺を、会社の責任者はどう考えているのか? ぜひとも意見を聞かせてほしい。

 そして、何よりも残念なのは多くの社員がパワハラを目撃しながらも、新入社員を救えなかったこと。

 「報復が怖くて、コンプライアンス委員会に告発できなかった?」

 そうかもしれない。実際私は何度もその手の相談をされてきた。

 「そこまで深刻だと思わなかった?」

 その可能性もある。

 「暴言を吐かれて彼が悩んでいたのは知っていた。でも、最初の頃は、その上司と飯を食いに行ったりしてたし、上司に暴言を吐かれても、言われたことをちゃんとやって認めてもらって。普通に元気だったときもあったんです。まさかうつになるまで、彼が追い詰められてるとは思いもしませんでした」

 これは上司のパワハラで同僚が精神疾患になり、自責の念に苦しむ男性をインタビューしたときに話してくれたことだ。