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 ……情けない。学生同士の会話かよ!というのが正直な感想である。

 この調査では加害者が男性会社員なのか、女性会社員なのかは聞いていない。

 だが、私の知る限り、男子学生に就活セクハラをする輩には女性会社員も少なからず含まれている。また、今回問題にしている就活生に対するセクハラではないけれど、社員同士の飲み会で、男性部下の性体験の有無をからかう女性上司を目の当たりにし、唖然(あぜん)としたことがある。

 自分があんなことみんなの前で言われたら嫌だろうに、明らかに赤面してる若い男性に「もう、弟みたいで心配なのよ~」とセクハラする女性上司には憤りも感じたし、同じ女性として恥ずかしかった。

 女子学生に「彼氏はいるのか?」と採用面接で脈絡もなく聞く輩は、男子学生にも「彼女はいるのか?」と同様のことをする。女子学生の体を平気で触る輩は、男子学生の体も平気で触る。セクハラをする会社員は「男にはこれくらいやっても構わないだろう」と勘違いし、セクハラをされた学生は「男のくせにと言われたくない」と泣き寝入りする。悔しくてたまらないのに、誰にも言えないのだ。

 学生たちの心はオジサンやオバさんが想像する以上に、ナイーブだ。そして、「内定の重さ」は私たちの時代とは比べものにならないくらい重く、「ちょっとでもいい会社に入りたい」という願いも強烈だ。理屈じゃない。将来不安だの、ブラック企業だの、勝ち組だの、意識高い系だの、非正規だの、引きこもりだの、さまざまな社会問題が複雑にからみあった結果、「我慢してでもいい会社に採用されたい!」という思いは強まっているのだ。

 もっとも「いい会社って何?」という根源的な問題はあるのだが、本題からそれるのでそこはおいておこう。

 いずれにせよ、就活生には男性もいれば、女性もいれば、LGBTもいる。性に関する問題は極めて個人的なデリケートな問題だ。性の違いで人間性や能力に違いがあるわけでもない。

 にもかかわらず、圧倒的に強い立場にいる会社側の人間がそれを利用して、「将来自分たちの仲間になるかもしれない就活生」に愚劣な言動をとったり、あざ笑ったりするのは絶対に許されるべきではないと思う。

採用過程で最も重視されるべきは何なのか

 だいたいいつから、こんなにも卑劣かつ幼稚な就活セクハラが横行するようになったのだろうか。先の連合の調査では、50代女性で就活セクハラを経験したのは4.7%、50代男性ではわずか1.8%だった。

 私自身、遠い過去を振り返っても採用の可否をちらつかせて、性的な関係を強要されたという話は一度も聞いたことがない。OB訪問もみんなやっていたけど、触られたという話は一回も聞いたことがない。もっとも「彼氏は?」「結婚は?」といった今だったらアウトのトークが普通にまかり通っていた時代なので、セクハラをセクハラと学生が思わなかった可能性もある。

 それでもやはり昨今の異常な就活狂騒曲や、大手病と揶揄(やゆ)される「大企業に就職する」というだけで、自分と他者を隔てる特別感がつくられている状況は異常だし、それに乗じて勘違いした“オレ様エリート”が増殖している状況は不気味だし、その歪さが弱者に向かわないように「オトナ」はあらゆる手段をつくすべきだ。

 だいだいね、採用過程で最も重要な確認事項は、「自分たちと同じ思いで仕事ができる人物かどうか?」と価値観のすり合わせでしょ? どんなに優秀な学生でも企業が大切にする価値観と違えば、能力を発揮することも引き出すこともできず、泥船に乗り込むことになるだけだ。

『他人の足を引っぱる男たち』(日本経済新聞出版社)


権力者による不祥事、職場にあふれるメンタル問題、 日本男性の孤独――すべては「会社員という病」が 原因だった? “ジジイの壁”第2弾。
・なぜ、優秀な若者が組織で活躍できないのか?
・なぜ、他国に比べて生産性が上がらないのか?
・なぜ、心根のゲスな権力者が多いのか?
そこに潜むのは、会社員の組織への過剰適応だった。 “ジジイ化”の元凶「会社員という病」をひもとく。