同時に、チームメンバー全員に「自分が参加している」という感覚を持たせることもリーダーの大切な仕事だ。

 ワールドカップ日本代表チームのロッカールームには、ジェイミーHC(ヘッドコーチ)からのメッセージが、メンバー一人ひとりのロッカーに張られていた。おそらく彼は彼がHCに就任してからも常に、リーダーとして、個々のメンバーと向き合い「アナタは必要な存在だ」というメッセージを送り続けたのではないだろうか。

 とはいえ、メンバーが増えれば増えるほど、リーダーの思いは届きづらくなるという側面もある。人が「一人の人」と日常的に向きあえるのはせいぜい10人。最適な人数は6人という調査結果もある。

 日本代表はその点もクリアしているのが、これまたすごい。

 報道されているとおり、リーチ・マイケル主将を筆頭に、プロップの稲垣啓太選手、ナンバーエイトの姫野和樹選手、フランカーのピーター・ラブスカフニ選手、スクラムハーフの田中史朗選手、スタンドオフ田村優選手、ウイングの松島幸太朗選手らに、リーダーとしてチームのかじ取りを任せた。

 そして、それぞれのリーダーのもと、少人数のミーティングを繰り返し行い、メンバー一人ひとりが発言し、現状の問題点や今後の課題を話し合うことで、「ONE TEAM」という価値観を浸透させていったのだ。

「もの言える空気」は上から下へと伝わる

 自分の意見を聞いてくれる「人」がいるからこそ人は発言する。「こんなこと言っちゃいけないんじゃないか」という心配をしなくてもいい「空気」があるからこそ、人は言いづらいことや失敗を言うことができる。

 そういった空気が生まれるのはリーダーがメンバーをリスペクトするからであり、そのリスペクトをその下の小グループのリーダーが肌で感じることで、小グループのメンバーにもリスペクトが生まれる。上から下、下から横に「いい空気」が伝染し、初めてチーム全体の空気感が出来上がっていくのである。

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