そういったチームワーク礼賛主義の流れの中で、「人はチームワークが苦手」という、これまた「確かに!」と多くの人がうなずく論説を打ち出したのが、チームワーク研究の第一人者の一人、リチャード・ハックマン博士である。
ハックマン博士いわく「ただ単にチームのこだわりだけではチーム力は発揮できない。メンバーたちのポテンシャルを生かすことができない」と。「世間ではチームをめぐる問題の原因と結果の順序を逆にとらえている」と指摘した。
目標共有と達成感がチームを進化させる
具体例として挙げたのが、交響楽団を対象にした調査だ。
ハックマン博士いわく、個々がチームに多少の不満を抱えているオーケストラの演奏の方が、メンバー全員が満足しきっているオーケストラのパフォーマンスよりも優れていることが分かった。チームメンバーたちが「最高の結果を残したい」という目標を共有できていると、「もっと自分にできることはないか?」とおのおのが努力する。その結果として、いい演奏ができた時に「このチームのメンバーでよかった」と満足感が得られ、さらに「チーム力」は進化していたのである。
もちろんその前提条件として、リーダーが「チームづくり」にこだわり、絶対的な方向性を示すことが必要不可欠。リーダーは「チームとしていい結果を出すこと」にこだわり続ける必要があり、その熱がメンバーに伝わったときに初めて、個々人が自分に足りないこと、自分がやるべきことに向き合うことができる。
それはまさにラグビー日本代表を率いたジェイミー・ジョセフHCが掲げた「ONE TEAM」であり、「ベスト8進出」という日本代表の目標だった。リーダーの一貫した揺るぎない姿勢は、チームの価値観とルールになる。
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