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(写真:shutterstock)

 台風19号の猛襲から一週間以上が経ったが、いまだに被害が拡大している。

 17日の時点で、65人死亡、14人行方不明、349人負傷。全半壊の住宅は94棟、浸水家屋は3万3600棟以上(総務省消防庁)。堤防が決壊したのは7県の59河川90カ所で、水が堤防を越えて浸水した河川も、国管理のもので22河川、都道府県管理では194河川だ(国土交通省)。

 さらに週末には雨が降り、朝晩は急激に冷えるようになった。何をどこから手をつけ、どうやって生きていけばいいのかと厳しい状況に追い込まれている方々のことを思うと、うしろめたい気持ちでいっぱいになる。

 「自然の猛威に人は屈するしかない」と大きな災害に見舞われるたびに、誰もが思う。だが、今回の台風ほど、重要な情報を切り捨ててしまう「バイアス(思考の偏りやゆがみ)」の存在を意識させられたことはない。

 もし、「心はバイアスから逃れられない」という人の本質的特徴をもっと理解できていれば、もっと何かできたんじゃないのか? もっと救える命があったんじゃないのか? そう思えてならないのである。

 「台風など気象による災害は地震とは異なり、予想し備えることができる唯一の災害」。それを信条に気象予報士として若い頃に報道番組に関わってきただけに、悔しくてしかたがないのである。

 そこで今回は、人の判断や意思決定の罠(わな)となる「バイアス」について考えてみようと思う。

生かせなかった東日本大震災の教訓

 「台風当日の夕方から緊急メールはガンガン届いていたのですが、対象が『郡山市全域』と広域だったため、たかをくくっていました。ところが、12日の夜半、暴風雨が吹き荒れ始めた後、居住町名が記載された避難指示メールが届きはじめ、さすがに慌てました。

 ただ、何に対してどう対処していいのか、まったく頭が働かず、あたふたするばかりで。避難所に歩いて行ったらずぶぬれになる雨量だし、ぬれたまま避難所にいたら寒くてつらいし、高台だし川からも距離があるから、今夜は家で待機しよう、と身勝手な判断をしました。

 幸い、私も自宅も被害はありませんでしたが、周辺は崩落や陥没、浸水により主な道路は封鎖されました。翌朝、惨状を見て初めて、豪雨被害とはこういうことか、と実感しました。

 福島県内の本宮市では、深夜からの増水により、自宅で命を落とされた方や、深夜0時すぎに自宅に戻られ、亡くなった方もいて、自分にも起こり得たことなのだと気づき、青ざめました。

 東日本大震災の被災経験から、地震時の緊急対応はできているつもりでしたが、氾濫や豪雨にはまったく生かすことができない自分にぼうぜんとしました」

 これは私のメルマガの読者から送られてきたメールである。