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 であるからして、シニアの「底力」を引き出すことに成功すれば、間違いなく50代を責める若手は減り、働かないおじさんはネガティブスパイラルから脱し「1+1=3、4、5…」とチーム力が高まり、長期的に生産性が向上する。

 では、空回りしがちな50代以上の社員が殻を破るために必要なものとは何か?

 「緩いつながりの構築」である。

 「強いつながり」とは、接触回数が多い、一緒にいる時間が長い、情報交換の頻度が多い、心理的に近いといったような関係を指し、社内の人間関係や仕事で繋がる人たちは強いつながりの人脈だと考えていい。

 で、その逆が「弱いつながり」となる。

 くしくも件の息子が「50歳以上はそもそも人間関係が狭過ぎる」と言っていた通り、1つの組織で長年過ごしてきたシニア社員は、似たような人とばかりつながっているため、アウェーで自分からアクションを起こすのが壊滅的に下手。それを打開する最良の手段が「緩いつながりの構築」である。

 役職定年で一旦腐った状態から脱し、今なお「仕事が楽しい」と笑う人たちは例外なく、「外の人たちと接する機会」の中で、殻を破るきっかけを得ていたのだ。

外に出れば恵まれていた自分が見える

 ある人は若い人たちの「朝活」で、ある人は資格取得の研修で、また、ある人は地域のボランティアで、彼らは自分の「立場」を俯瞰することに成功していた。

 役職定年があるような大企業に勤めている自分、役職定年になる役職まで務めあげた自分、会社に行けば自分の椅子と机がある自分、といった当たり前が、外へ出てみれば決して当たり前ではなかった、と。そして、それがいかに恵まれているかを痛感した、と。

 強いつながりの中では見つけられなかった、価値観や言葉に触れることで、それまでの不満が思い過ごしだったことに気づいていたのである。

 しかも、緩いつながりの中では、自分から話しかけないと誰も相手にしてくれない。自分から動かないと、仲間になれない。つまり、自分がいることで何かが回ることを経験し、アウェーで生きていくコツをつかむ。緩いつながりを持つことで、会社にも居場所を作れるようになる。緩いつながりの中に身を置く経験をするだけで、彼らの暗黙知が刺激されるのだ。

 世間では「会社の外に居場所を作れ!」がシニア社員の定説だが、「会社の中で居場所を作れ!」。そのために緩いつながりを作る。ますます50代のおじさん社員が増えていく職場で、会社にも、社員にも、まだまだできることはあるように思います。

『他人の足を引っぱる男たち』(日本経済新聞出版社)


権力者による不祥事、職場にあふれるメンタル問題、
日本男性の孤独――すべては「会社員という病」が
原因だった?“ジジイの壁”第2弾。
・自分の仕事より、他人を落とすことばかりに熱心
・上司の顔色には敏感だが、部下の顔色には鈍感
・でも、なんでそういうヤカラが出世していくの?
そこに潜むのは、会社員の組織への過剰適応だった。
“会社員消滅時代”をあなたはどう生きる?