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 いずれにせよ、大抵こういった悪意なき無自覚の「言葉狩り」が起こるときは、決まって知識不足、認識不足、無知が存在する。

 実際、3日の記者会見で、根本厚労相は以下のようにコメントしており、私はこのコメントの方がむしろ問題だと考えている(抜粋要約)。

 「正社員に就けずにパートなどの働き方を余儀なくされている方や、積極的にパートなどの働き方を選択している方など、多様な働き方が進んでいる。単に『正規』『非正規』という切り分け方だけでよいのか、それぞれの課題に応じた施策を講ずるべきではないか、と思っている。

 パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者に寄り添った政策を展開して、同一労働同一賃金の実現に向けて全力で取り組んでいく、これが私の姿勢であり、基本的な考え方です」

 ……ふむ。「それぞれの課題」「同一労働同一賃金」という言葉を大臣が使っているので、一見問題があるとは思えない発言だし、ご本人からはいっさい悪意は感じられない

 だが、「働き方」と「働かせ方」は全くの別物である。これを混同していることにこそ、大きな問題がある。

 働き方の主語は「働く人」。働かせ方の主語は「会社」だ。

「非正規雇用」vs「正社員」という構造が生まれた

 パートタイムだろうと、有期雇用だろうと、派遣だろうと、はたまた正社員だろうと「働く」ということに全く違いはない。にもかかわらず、企業が非正規と正規という単なる雇用形態の違いで、

  • 賃金が低い
  • 残業代が出ない
  • 産休や育休、有休が取れない
  • 時短労働ができない
  • 社内教育の機会がない
  • 昇進や昇給の機会がない
  • 雇用保険に入れない
  • 簡単に「雇い止め」にあう、etc.etc.…

と「働かせ方」を区別したのだ。

 労働基準法や男女雇用均等法で禁止されていることを企業側が理解していない場合も多く、非正規雇用者は権利があるのに行使できない。

 しかも、非正規社員が雇用契約している相手は「企業」だ。ところが企業による「待遇格差」が慣例化したことで、まるで「正社員さま」と契約しているかのような事態も発生している。

 「私たちが、誰のために働かされているか分かります? 正社員のためですよ。何もしない正社員のために、契約社員は必死で働かされているんです」

 ある会社で非正規社員として働く女性が、こう漏らしたことがある。