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(写真:shutterstock)

 「非正規と呼ぶな!」と指示したメールが厚生労働省内に出回ったらしい。先週あちこちで批判されていたので、ご存じの方も多いと思うけれど簡単に振り返っておく。

 問題のメールは今年4月に同省の雇用環境・均等局の担当者名で省内の全部局に「『非正規雇用労働者』の呼称について(周知)」という件名で通知されたもので、国会答弁などでは「パートタイム労働者」「有期雇用労働者」「派遣労働者」などの呼称を使うことを指示。「非正規」のみや「非正規労働者」という言葉は用いないよう注意を促すものだった。

 また、「『非正規雇用』のネーミングについては、これらの働き方には前向きなものがあるにもかかわらず、ネガティブなイメージがあるとの大臣の御指摘があったことも踏まえ、当局で検討していた」と記載され、「大臣了」という表現もあったという。

 報道を受け根本匠厚生労働相はメールの指示や関与を否定。また、厚労省は内容が不正確だとし、文書やメールを撤回している。

 厚労省は、2010年版の「労働経済の分析」(労働経済白書)で、1997年と2007年の年収分布を比較し、10年間で年収が100万~200万円台半ばの低所得者の割合が高まり、労働者の収入格差が広がったのは、「労働者派遣事業の規制緩和が後押しした」と自ら国の責任を認めていたのに……。この期に及んで言葉狩りに加担するとは実に残念である。

「非正規」の言葉を避ける“空気”が醸成されている

 いったい何度、発覚、否定、撤回、が繰り返されていくのだろうか。

 今回の問題を、役所の知人など複数名に確認したところ、かねてから永田町では「非 正規という言葉はイメージが悪い」「希望して非正規になっている人も多い」という意見があったそうだ。

 「老後資金年金2000万円問題」が浮上し野党が行ったヒアリングでも(6月19日)、年金課長が「根本厚労相から『非正規と言うな』と言われている」と発言し、21日に根本厚労相が記者会見で課長の発言を否定したこともあった。

 要するに、メールを撤回しようと何だろうと、「非正規という言葉はなくそうぜ!」という“空気”が出来上がっていたのだろう。