全4915文字
(写真:shutterstock)

 28歳でANAを退社する時、何度説明されてもちっとも理解できなかったのが“年金問題”だった。それからかなりの歳月が過ぎたが、やっぱりよく分からない。

 先日公表された「公的年金の財政検証結果」は、何度読んでも分からなかった。「いろいろな社会問題について書いているくせにシャレにならないだろう」と怒られてしまうかもしれないけど……。

 専門家の方たちがポイントをあれこれ解説してくれているので、今さら門外漢の私があれこれ言うのはいかがなものかとも思う。しかし、その内容には首を傾げざるを得ないポイントがいくつもある。

 何で「夫は会社員を40年、妻は一度も働きに出たことがない主婦」がモデルなんだ? 共働き世帯数が「夫が勤め人・妻が専業主婦世帯」を上回ってから20年以上(1997年に逆転した)もたつのに、あまりにも現実から乖離(かいり)しているではないか。

 また、「標準的なケース」として新聞各紙で紹介されている「ケース3」では、2047年度時点の所得代替率が50.8%というけど、その基準となる賃金は月額47.2万円で、2019年の35.7万円より11.5万も高い。これも現実からは大きく外れた推定だと言わざるを得ない。

“虚構”のモデルに基づいて描かれる年金の姿

 厚生労働省の賃金構造基本統計調査からサラリーマン月給の年次推移を見ると、1997年以降、月収はほぼ変わらず2001年以降はむしろ下降傾向にある。今回の前提とされているように、本当にここまで上がるのだろうか?

 しかも、今後は非正規雇用が大量に増えるとみられている。そして、正社員の厚生年金の加入率は99%超だが、非正規では51%と劇的に下がる。

 にもかかわらずそういった事情はいっさい加味されることなく、“虚構”のモデルと“虚構”の未来がはじき出された。いくつものパターンを一生懸命計算してくださった人には申し訳ないけど、わざと分かりづらくさせているのではないか? などとひねくれた見方をしたくなる。

 そもそも、公的年金の定期健診は「自分」の将来を、国の状況に鑑みてイメージするためのものではないのか。私が考える「そもそも」が間違っているってことだろうか?

 「今後厚労省は、今回の検証結果を踏まえ、来年の国会に関連法案を提出する予定」なんて報道を見ると、ますます疑問が膨れ上がって暗澹(あんたん)たる気分になってしまうのだ。

 結局のところ、できる限り働き、できる限り稼ぎ、なるべく若い世代に迷惑をかけないよう健康に留意すること。それでいてあまり長生きしないでほどほどにあの世にいけるくらい不健康に生活することも必要だってことを、国がご丁寧にケース分けまでして示してくれたということなのだろう。