だが、“お友達”が教えてくれたのは、生活のために働く高齢者の姿だ。自分の親の老いを日々感じる中で、親と同じ年齢の人たちが若いヘルパーと同じ仕事をフルタイムで「低賃金に耐え、黙々と働いている」。

 繰り返すが、貧困は社会が作り出している。一部の為政者たちの失政のせいで、80歳近くなっても低賃金に耐えて働かなくてはならない高齢者が量産されているのだ。

 そんな中、延び続けているが日本の平均寿命だ。本当は喜ぶべきなのだろうけど、どうやって喜べばいいのか。個人的には「延びてしまった感」ありありで、気はめいるばかりだ。

 世界に誇る「長寿国の寿命」がさらに延びてしまったのである(以下、おさらい)。

さらに長くなる人生にどう向き合うか

 2018年の日本人の平均寿命は、女性が87.32歳(世界2位)、男性が81.25歳(世界3位)で、いずれも過去最高を更新。男女ともに、がん、心疾患、脳血管疾患の「3大疾患」による死亡率が改善した影響で、「医療水準や健康意識の向上などの成果とみられる。平均寿命はさらに延びる可能性がある」らしい(by 厚労省の担当者)。

 平均寿命が延びたと報じられると、決まって「寝たきりばかり増やしてどうするんだよ」的コメントが散見されるが、それは大丈夫だ。

 介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は男女とも平均寿命以上に延び、こちらも世界最高レベルに達している。

 男性は01年に69.40歳だったが、07年に70.33歳と70歳を超え、16年は72.14歳。女性は01年に72.65歳だったが、16年は74.79歳まで延びた。結果、16年の平均寿命と健康寿命の差は男性8.84年、女性12.35年と短くなっているのである。

しかも、厚労省は、2040年までに健康寿命を3年以上延ばすと意気込んでいるので、健康寿命は男女とも75年以上になる可能性が高い。

 健康寿命を延ばす前に、働く高齢者の8割を占める非正規の賃金を上げてくれ。しつこいけど貧困は社会が作り出すもので、貧困は世代を超えて連鎖するという現実を受け止めて欲しい。

『他人の足を引っぱる男たち』(日本経済新聞出版社)


権力者による不祥事、職場にあふれるメンタル問題、 日本男性の孤独――すべては「会社員という病」が 原因だった?“ジジイの壁”第2弾。
・なぜ、優秀な若者が組織で活躍できないのか?
・なぜ、他国に比べて生産性が上がらないのか?
・なぜ、心根のゲスな権力者が多いのか?
そこに潜むのは、会社員の組織への過剰適応だった。 “ジジイ化”の元凶「会社員という病」をひもとく。

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