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 人生は想定外の連続である。

 「妻がウツになっちゃって。共働き前提でやってると、一番のリスクはどちらかがダメになった場合かもしれません」

 こう話すのは、現在、雇用延長で働く63歳の男性である。
 マンションの購入も、老後の計画も、「妻の収入がある」という前提で組み立ててきた。
 ところが妻が数年前にメンタル不全に陥ってしまったそうだ。

 働き方、働かせ方の変化は、ときに個人の「未来」に思わぬリスクとなる。
 そこで今回は「未来不安」についてあれこれ考えてみようと思う。

 まずは男性のお話から。

 「妻は子育てが一段落した30代後半に、元にいた会社に復職しました。当時は女性が育児をしながら続けるのが難しい時代でしたから、出産とともに退職。子育てが一段落したときに上司が声をかけてくれたんです。はい、契約社員です。中途採用に条件を合わせたと聞いています。

ダブルインカムが続く前提で組んだ住宅ローン

 ちょうど子供が小学校高学年になった頃、家を買おうということになりましてね。2人とも定年までは働く予定でしたから、妻が希望していた場所にいい物件が出たので、購入したんです。

 ところが妻がウツになった。会社も辞めることになってしまったんです。

 復帰した頃は良かったんですよ。ところが彼女が40歳を過ぎ、年下が上司になった。任されるのはサブ的な仕事ばかりになり、それでも本人は腐ることもなく頑張っていました。

 でも、相当ストレスがたまっていたのか、家事を一切拒否するようになって。当時、私は海外の案件を担当していて海外出張が多かったことも、彼女の負担になっていたんです。

 それでウツ。私が定年になる直前です。

 以前は、転職や起業も考えていましたが、妻が不安定な状況で私が冒険するわけにはいきません。雇用延長を選択しました。

 世帯収入で老後の予定を組んでいましたが、すべて私が稼ぐしかない。でも、これがかなりしんどい。

 定年時の退職金で住宅ローンは減らせるだけ減らしましたが、少ない預金を全部切り崩すのは怖かったので、70歳まで払い続けるようにしました。