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 2015年の60歳以上の労働力人口は1304万人で、05年からの10年間で約4割増加。30年には1439万人にまで増加し、全体に占める割合は 22.6%に達すると予想される。働き手の4人に1人。そう4人に1人が60歳以上だ。55歳以上まで広げると3 人に1人(35.4%)。どこもかしこも“戦力外”の社員ばかりだ。

 これまで企業内でのベテラン社員の力の「生かし方」には散々疑問を呈してきたけど、定年後の働き方ももっと考える必要があるのではないか。

 個人の頑張り次第で賃金上昇が可能だったり、毎年ごとの更新じゃなく、5年の継続雇用を前提としたり。

 このときバカにしてはならないのが経験の力だ。

 例えば、米スタンフォード大学のジョイ・テイラー教授らが行った実験は、人生経験で培われる「人間力」が、未知の可能性を引き出す貴重なリソースであることを証明した。

長期視点でシニアの能力を生かす雇用形態が必要

 テイラー教授らは、米連邦航空局が職業パイロットの定年を60歳から65歳に引き上げたことを受け、40~69歳のパイロットに、新しい技術に関する訓練を行い、「技術習得のスピードと技術の向上」と年齢との関連を検討した。

 その結果、60~69歳のパイロットは、最初こそ若いパイロットに比べ技術が劣っていたが、時間とともにその差は縮まり、パイロットにもっとも必要とされる「回避能力」に関しては、若手よりも大きな向上が認められたのだ。

 「時間をかければ、人生経験という何ら技術とは関係ないと考えられがちな要素が、技術の向上につながる」(by テイラー教授)

 実際私がインタビューした企業にも、経験値が新しい技術にも生かせると考え、シニアを「働けるまで戦力」と考えるトップもあった。

 「週3日勤務でもいい」と体力にあった働き方を認めたり、AI(人工知能)や在宅勤務を最大限活用しシニアが働ける環境作りを積極的に進めるなど、知恵を絞って「貴重な戦力」としてシニアを雇用し、賃金アップに努めていたのだ。

 「変化の時代」だからこそ、雇用環境くらいは安定・安心を担保する。そんな働かせ方をする企業が増えれば、おのずと積極的に学び続ける人も増えると思う。

『他人の足を引っぱる男たち』(日本経済新聞出版社)


権力者による不祥事、職場にあふれるメンタル問題、 日本男性の孤独――すべては「会社員という病」が 原因だった?“ジジイの壁”第2弾。
・なぜ、優秀な若者が組織で活躍できないのか?
・なぜ、他国に比べて生産性が上がらないのか?
・なぜ、心根のゲスな権力者が多いのか?
そこに潜むのは、会社員の組織への過剰適応だった。 “ジジイ化”の元凶「会社員という病」をひもとく。