全4868文字

 なんだが気が滅入ってくるのだが、ここに興味深い分析がある。

 非正規で働く人たちの平均賃金の決定要因について、業種・性別・企業規模・学歴の面でそれぞれ異なる労働者グループ208個のデータを用いて分析したところ、60歳代前半の非正規労働者の低賃金が強い影響を与えていることが確認されたのだ。

 つまり、シニアを低賃金で雇う企業が増えることが、非正規雇用者全体の賃金を抑制している可能性が統計的に示唆されたのである(日本総研「シニアの活躍促進に向けた人材戦略」)。

 日本では「65歳以降も働けるうちは働きたいと答える人が他の先進国に比べて多い」という話題がよく報じられるが、働かないと将来が不安なのだ。

 「下流老人」という言葉がはやったときに、「それは一部の人の話。不安を煽(あお)っているだけ」と豪語した識者がいたが、今後は「貧困高齢者」「貧困高齢者予備軍」は増えると考えた方がいい。そして、今の30代、40代が60歳以上になったら状況はもっともっと深刻になる。

寿命は延びるが雇用形態は進化していない

 今は正社員で夫婦共働きで世帯収入が多くても、何らかの事態をきっかけに働けなくなったり、非正規になる可能性もある。 冒頭の男性がそうだったように、どんなに老後に備えていても、予測どおりにいかないのが現実なのだ。

 その一方で、寿命が延びれば、がんなどの病気になるリスクは増す。なのに雇用環境はちっとも長寿によりそった形ではない。

 40代、50代の中間管理職は疲弊し、役職定年でモチベーションが下がり、雇用延長で経済的に窮し、65歳以上になると「働きたくても仕事がない」。さすがに「24時間働けますか?」とおおっぴらに言う人はいなくなったが、企業が好むのはいまだに昭和と平成初期と同じ、元気で、バリバリ24時間働ける人材なのだ。