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 とにかくね、賃金が驚くほど低いんです。

 雇用延長だと最低賃金です。 会社にもよるんでしょうけど、うちの場合は段階的に最低賃金になるまで減らされるんです。

 つまり、現役時代に頑張って稼いだ人ほど、減り幅が大きい。
 しかも、週5勤務を今年度から週3に減らされた。最低賃金で1日8時間、週3勤務ですから……。わかります? 少ないでしょ?

 会社には65歳までしかいられないので、それ以降は再就職先を探すことになります。

 先輩や同級生からは、あまりいい仕事はないし、カネがもらえればラッキーくらいの気持ちでいた方がいいと言われていますが、現実問題として私は頑張って稼がなきゃなりません。

 とにかく私がどうにかするしかありませんが、どこまでがんばれるか。正直、不安です……」

 ……さて、いかがだろうか。

 実は最近、50歳~70歳までの人たちを集中的にインタビューしているのだが、ちょっとだけ驚かされたのが「共働き世帯」の多さだ。

 共働き世帯数が「夫が勤め人・妻が専業主婦世帯」より多くなった1997年以降、その差は年々拡大傾向になり、最新のデータでは共働き世帯が1219万世帯に対し、専業主婦世帯は600万世帯なので、当たり前といえば当たり前かもしれない(資料:労働政策研究・研修機構)。

 ただ、定年以降の働き方に「妻との関係性」がいい意味でも悪い意味でも、与える影響は大きく、件の男性のように「共働き前提が崩れた」という人は少なくなかったのである。

定年後雇用延長の収入激減が焦りを生む

 と、ここまでコラムを書いてちょいとひと息つこうと、7月26日の日本経済新聞朝刊を開くとまさに同様の話題が!

 2面の迫真というコラムに、共働きの妻の収入を当てにして住宅ローンの返済計画を立てたが離婚し「自己破産しか、もう手がないのか」と悩む38歳の男性、「再就職して年収が半減し、返済がつらくなった」という64歳の会社員が取り上げられていたのである。……ふむ。私がインタビューで感じていただけではなかったということか。

 しかも、記事の64歳の会社員は定年後も働く予定にしていたので銀行の勧めに応じ住み替えを決め、「退職前に借りたローンが残り2000万円」あるとのこと。その背景には「多くの人が60歳以降も働く長寿時代。その退職金を当て込み銀行はシニア向けの融資の拡大を狙う」といった銀行側の思惑も関係しているという(記事より抜粋)。

 いずれにせよ、60歳以上の雇用環境、特に賃金に関する問題が住宅ローンを含めた「生活」に与える影響は大きい。

 しかも、60歳以上の再就職はマンションやビルの管理人さん、警備員さん、清掃スタッフなどがほとんどで、人気がある図書館や美術館の司書の募集は極めて少ない。「就職するからにはなるべく希望している職種で、なるべく高い賃金で…… 」とあれこれ悩んでいるうちに、時間だけが経つ。

 「今働かないと明日食っていけない」といった切羽詰まった状況になれば、何でもやる。が、とりあえずは大丈夫。その中途半端さが逆に、「どうにかしなきゃ」という焦りと、「これだけはやりたくない」というプライドを生んでしまうのである。