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(写真:shutterstock)
 

 かんぽ生命保険の不適切販売、ついに、というか、やっと、そう、やっと、「明るみに出た」。

 

 具体的な日付は思い出せないのだが、東日本大震災前だったのは確かなので、かれこれ10年近く前、日本郵便主催の講演会に呼ばれたことがあった。

 私はその日もいつものように控室で、講演会の担当者から職場の状況を探っていた。探るとは、いささか悪い事をやっているみたいだが、私にとってこの時間は現場の生の声が聞ける貴重な機会だ。

 最初は表層的な会話でも、あれこれ他の企業が抱えている問題などを話すと本音をもらす。“偉い人”がいるときには決して公言できない現場の問題を教えてくれるのである。

 そういった状況を踏まえて講演会を行うと、会場にいる人たちの“熱”が高まり、質疑応答も活発になる。言葉が届きやすくなるというか、おそらく「自分たちの問題」として受け止めてくれるのだろう。

 で、そのとき。つまり10年近く前の講演会の控室で耳にしたのは「パワハラが多い」ということだった。民営化でそれまで1つだった会社が3つに分割され、人間関係が悪化。さらに過剰なノルマが課せられ、うつになる社員が増えていると嘆いていたのである。

 その後も何回か日本郵政グループや組合の主催の講演会に呼んでいただいたが、聞こえてくるのはパワハラ問題ばかりで。「恫喝(どうかつ)研修」や「懲罰研修」という言葉も何度か聞いた。

 「特に保険の人たちは本当に大変なんです」という人が多く、そのうち数名の方はインタビューにも協力してくださった。「以前に比べると良くなった」という声もあったが、そういった現場でも「保険は大変」という話は尽きなかったのである。

 であるからして、今回の問題は起こるべくして起きたもので、組織構造そのものに病巣があり、現場ではなく組織を腐敗させた経営側の問題であると私は考えている。

事実の公表が遅れ対応も後手後手に

 ところが、10日にかんぽ生命の植平光彦社長と、販売委託先の日本郵便の横山邦男社長が行った2時間超の記者会見は「保身」に満ちたもので、記者からの質問に答える表情には「おまえら何言ってんだよ」といった“圧”が垣間見えた。なるほど、不誠実、傲慢、という言葉はこういうときに使うものなのだな、きっと。

 と、冒頭から一気に怒りを爆発させてしまったが、記者会見での具体的な「がっかり発言」を紹介する前に、ここまでの経緯を振り返っておく。

 そもそもの始まりは、6月14日。ゆうちょ銀行の「多数の店舗・社員において、投信の販売時に社内ルール等に即しない取り扱いや営業行為が認められた」というメッセージを、6月上旬に池田憲人社長が社員に送り、2018年度の社内表彰式を中止したと報じたことだった(「ゆうちょ銀行、高齢者向け投信で不適切販売 」)。

 その第一報から10日経った6月24日。

 かんぽ生命は、2018年11月分の契約を調査した結果、同時期の約2万1000件の契約乗り換えのうち、約5800件で契約者の負担が増えていたと公表するが、「不適切な営業とは認識していない」と説明。さらにその3日後の27日には、24日の公表後に顧客から苦情が殺到し、過去5年分の契約を調査したところ、不利益を受けた事例が約2万4000件にのぼっていると発表した。

 と、既にこの時点で後手後手なのだが、西日本新聞のスクープで問題はさらに拡大する。