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 もし、本当に「現場の声」を知りたかったのなら、自ら取りにいきさえすればよかった。「私としてはもうちょっと現場を回る、お客様を回るという活動をしておるところでございます」だって? 何を今更おっしゃっているのか。

 「まずいことが起きてるのを知ったのは最近」とは、どういうことなのだろう。上記の事実は「まずいこと」ではなかったってこと? あるいは見たことも、聞いたこともないというのだろうか。

 おまけに記者会見翌日の11日。日本郵便が社内情報をインターネットに投稿しないように全社員に周知する通達をしていたという。

 もし、記者会見で「今後の調査で販売職員の法令違反などが判明すれば厳正に対処する」ではなく、「そういった不正に職員が走らなくてはならなかった職場風土を真摯に反省し、改善に努める」と一言でも言ってくれれば、一縷(いちる)の望みを託すことができた。

 郵政グループの社員たちが生き生きと働ける健康な職場をつくり、お客様を大切にするサービスを提供する元気な組織づくりを目指すと言ってほしかった。

 それはこれまで苦しんできた社員(=職員)、傷つき、二度と働けなくなった社員と家族に寄りそうことでもある。数字合わせをするだけがトップの責務ではない。そこで働く社員が、もっと能力を発揮したい、もっといい仕事をしたい、と思える場をつくる。その結果として、企業が成長するのだ。

 もちろん不正を行った社員に不正をしたことへの罰は必要かもしれない。だが、そこでトカゲの尻尾切りをしてどうする? 「そもそもの原因」を考えられない人は、トップに居座る資格などないのではないか。うん、「ない」と思う。

組織内だけのルール重視に未来はない

 なんだか偉そうなことを言ってしまったけど、「お客様本位」という言葉に空虚さだけが漂い続けた記者会見には、暗澹(あんたん)たる気持ちしか湧いてこなかった。

 しかも……、かんぽ生命保険と日本郵便2人の社長が座った記者会見の席上には、横山社長が組織で持つ圧倒的な「権力」の臭いが漂いまくっていた。

 記者から「日本郵便にかんぽ生命はモノを言えないようなパワーバランスがあるのではないか?」との質問があったが、記者会見を見れば一目瞭然である。

 つまるところ、ウチとタテが優先される組織では、組織内だけに通じる暗黙のルールだけが踏襲され、組織の前例主義、互助会的性質、隠蔽体質が引き継がれる。

 保身しかない経営者が舵をとる組織に……未来はないと思う。