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 そう。これだ。この態度こそが腐敗する組織のトップの典型である。

 会社は「人」の集まりであり、働いているのは人であるという当たり前を忘れ、株価と数字しか見ないトップは、緊急な対処を要する情報に絶対にアクセスできない。

 とりわけ組織が厳格で、階層構造的な「ウチとタテ」の強い組織では、直属の上司・部下の関係を超えて情報が行き交うことはめったにない。いや、皆無と言っても過言ではない。すべての管理職は直属の部下から上がってくる情報だけに頼り、それ以外の情報への感度が鈍り、見過ごしてしまうのだ。

 メールを毎朝チェックしている? 社員の文書を確認している? 支社長には現場の声を上げろと言っている? それだけでは足りないから、現場に出向く、お客さんのところに出向く?

 逆だ。

 現場を知るトップだからこそ、現場に近いトップだからこそ、下は「問題」を上に伝えることができる。問題が深刻であればあるほど、自分に責任がかかる問題であればあるほど、トップとの距離感が極めて重要になる。

 上が下の情報を得るには、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感を共有できる「場」が必要不可欠。トップには、「自ら探し求めなければ手に入らない情報を探す気構え」が必要なのだ。

情報が上下に行き交わない組織のあやうさ

 私はこれまでたくさんの企業を取材させていただいたが、問題を抱える会社は例外なく上と下が断絶し、そのことにトップは1ミリも気づいていなかった。そういった会社は大抵、「役員専用のエレベーター」があり、社員は「ナマ社長」を見たことがない。

 一方、生産性を上げ、世界で通じるワザを持っている企業のトップは、誰一人として社長室にこもることがなかった。毎朝社内を1時間かけて歩きまわったり、社食で従業員たちと食事をしたり、それぞれのやり方で、それぞれの考えで、社員と“人”としてつながる場や機会を意識的につくり、MBWA(Management By Walking Around)を実践していたのである。

 だいたい「現場の声」というけど、そんなものは以前からあった。西日本新聞から散々問題提起され、NHKのクローズアップ現代+でも18年4月、郵便局関係者300件以上の情報をもとに高齢者を狙った“不適正な手法”を特集している。

 この番組では現役の郵便局員から入手した内部資料を紹介しているが、そこには「2016年の9カ月間に客から4000件以上の苦情が寄せられていた」と書かれていた。

 さらに、保険業法に違反し不適正であるとして金融庁へ届け出された事案が、2015年で16件もあり、中には局長が事件の隠蔽に関与したり、7年で17件の不適正契約に関わっていたなどという、悪質な事例まで存在したことが分かっている。