介護現場の上司部下、同僚との関係は、入居者へのサービスに直結する。人間関係の良い職場は、働く人たちの職務満足度が高く、入居者からの評価も高い。

 そもそもマネジメントとは管理ではなく、限られたリソースを最大限に動かし、生かすこと。「人の回し方」「情報の回し方」「カネの回し方」をいかにマネジメントするかで働く人たちのパフォーマンスは大きく変わる。

 大企業にいた人が中小企業に転職したり、出向したりしたときに「マネジメントができていない」「働く人たちの意識が低い」ともらすことがある。「まずはそこから変えようと改革をしたんです」と、そこでのチャレンジを誇らしげに語る人もいる。

 もし、批判されているように損保ジャパンが今回の方針を「新手の追い出し部屋」と考えているとしたなら、それは大きな過ちであり、ぜひとも改めて欲しい。

 大きな組織で損保マンとして経験を積んできた人たちの知見が介護現場を活性化すると信じて欲しい。そして、社員たちにそのメッセージをきちんと伝えて欲しい。

 組織を変えたきゃ、「若者、よそ者、バカ者を生かせ!」と言うように、元損保マンが介護現場に入れば、ブラック職場の代名詞でもある介護職場を変えることができる。

 というか、私はそう期待している‥‥のである。

泥臭い仕事現場を経験して成長した人は少なくない

 それに‥‥、入所者の排せつ物の処理などをあたかも「損保マンのエリートには耐え難い仕事」のごとく指摘する意見があったが、損保マンたちだって若い頃には「え? こんなことを損保マンがやらなきゃいけないの?」という、現場の“雪かき仕事”をした経験はあるはずである。

 私は航空会社のCA(客室乗務員)時代に、数えきれないほどお客様の排せつ物の処理をしたし、抱っこしていた赤ちゃんに肩に吐かれたこともある。お客様が飛行機酔いして掃除に追われたことも何回も経験した。

 某電鉄会社のトップは、「うちの会社では半年間、電車の車掌を経験させるんですが、自身、あれほど貴重な経験はなかったと」と語り、某建設会社のトップは、「若いときの現場経験が、働き方改革を考えるときに役立った」と断言する。某新聞社の記者は「集金とか新聞配達とか新人のときやったんですよ」と笑い、某メーカーの部長は、「地方回りを若いときに経験させられたことで、自分の仕事に対する意識が変わった」と教えてくれた。

 どんな仕事にも誰かがらやらなきゃいけない“雪かき仕事”がある。マニュアルには書かれていない、外の人は知り得ない、人事評価の対象にもならない仕事だ。でも、それをやった経験があるか、そういう仕事があることを知っているかで、その人の仕事ぶり、とりわけマネジメント層になったときの働きぶりには雲泥の差が生まれるものだ。

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