2018年にOECDが「Working Better with Age: Japan」をまとめ、内容について言及したアンヘル・グリアOECD事務総長のコメントが話題となった。

 「職業人生の終わりに近づいて、まだ働きたいと思っている高齢労働者は非正規雇用よりも良い待遇を受けるに値する。また、高齢者が労働市場だけでなく経済全体にもたらす知恵、スキル、経験の恩恵を社会全体が受けられるようにすべきである。したがって日本は、このリスクを減らすために、定年退職年齢の引き上げに着手する必要があり、将来的には他のOECD諸国ですでに行われているように定年制を撤廃しなければならない」

 私はまったくもってこの通りだと思う。

 体力レベルも思考レベルも抜群に高いのであれば、賃金を上げればよろし。ところが日本では「経験の恩恵」は「社会の弊害」とばかりに、定年に達したとたん賃金の低い非正規雇用に切り替わる。その理屈が「外」からは理解不能なのだ。

リスクある資産運用の推奨は生活の安定と矛盾

 「本当の意味での国民経済とは何であろうか。それは、この日本列島で生活している1億2000万人が、どうやって食べどうやって生きて行くかという問題である。その1億2000万人が、どうやって雇用を確保し、所得水準を上げ、生活の安定を享受するか、これが国民経済である」

 これは大蔵官僚時代に「所得倍増計画」を立案し、高度成長の政策的基礎のプランナーとして活躍したことで知られる下村治さんのお言葉だが、これを読むと資産運用を推奨する前にやるべきことがあるのではないかと思わざるをえない。

 銀行さんが超高齢化社会に向けて「ビジネスモデル」を議論し、ニーズにあったさまざまな商品やサービスを考え、進めるのは一向にかまわない。が、国が目指すべきは日本列島で生活する人の「生活の安定」であり、生活の安定と安心を支える施策を充実させること。損失リスクもある投資を推奨するとは本末転倒である。

 つまるところ…、「投資するお金が稼げない人」は切り捨てられるのだ。投資家にならない限り、“豊かな老後”は手に入らない。「俺たちちゃんと言ったよね? 言われた通りに投資しないからだよ。自己責任!」と、近い将来に“大臣”がコメントするのだ。

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