とまぁ、あれこれと書いてあったけど、報告書の趣旨を私なりにシンプルにまとめると、「タンス預金を株式市場に回しましょう! 団塊の世代は結構カネ持ってるはずだから、根こそぎいただきましょう! で、投資人気を高めて若い人たちからも分捕っちゃいましょう!だって日本の高齢者は、体力レベルも高い! 思考レベルも高い! 70歳過ぎても働きたいって言ってるんだから、大丈夫っしょ?」ってこと。

 これまでも政府がまとめるさまざまな報告書の問題点や疑問点を取りあげてきたけど、これほどまでにさもしい報告書を私は見たことがない。申し訳ないけど、バカにしてる。そう思えてならなかったのである。

 麻生財務大臣は「100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか? 普通の人はないよ。そういったことを考えて、きちんとしたものを今のうちから考えておかないといかんのですよ」と記者団に語っていたけど、これが政治家のやる仕事なのだろうか。

 カネではなく、人の顔を見てくれよ、と。そうすれば2000万円という数字の無責任さがわかるはずだ。

歳を経るほど広がる非正規の賃金格差

 報告書でも指摘されているように、非正規は低賃金で雇用が不安定であることに加え、退職金などない。政府はフリーランスをやたらと推進しているけど、フリーランスという甘美なワードの実態はただの非正規雇用だ。

 非正規と正社員の賃金格差は、30代前半で正社員281.9万円、非正規社員213万円と、その差約70万円程度だが、その後さらに差は広がり、30代後半で約100万円、50代前半では、200万円以上に差が広がっていく。

 そんな状況で、どうやって投資しろ!というのか。

 報告書では「支出が伸びない」としているけど、それは「出すカネがない」だけのこと。「転職、副業、フリーランスなど若い人の間でさまざまな働き方が広がっている」のではなく、「正社員の椅子が減った」ことが引き金になっているんじゃないのか。

 「日本が高齢化社会対策を放置しているのはなぜか?」。
 日本で暮らす外国人の知人は私にこう問うた。やがて「日本では投資のことを社会保障と呼ぶ」ようになっていくのだろう。

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