「子供3人産め!とか、もう無理だし」 「2000万円貯めろ! とかも、無理だし」 「消費税は上がる!給料は上がらない!」 「で、70歳まで働け!」 「でもって、95歳まで生きるってさ」

  ‥‥先週、金融庁が発表した「老後2000万円不足」問題は、私の周りでもちょっとした話題となった。第一報をテレビのニュースで聞いたときには、「国が2000万円貯めて、資産運用しろってどういうこと??」と、即座に理解できなかった。「まさか新手の“振り込め詐欺”?」などと耳を疑ったほどだ。

 そこでネット記事やら翌朝の新聞紙面を読み漁ったのだが、どれもこれも書いてあることは同じで、やはり理解できない。例のごとく私の脳内では、おサルが「年金はもらえないってことだろ!」と憤り、うさぎは「100年安心って嘘だったのか‥‥」と今更ながらショックを受け、タヌキは「ってことは年金払うのはやめて、貯めた方がいいってことだな」と開き直るなど、大騒ぎだった。

 そこで金融庁がまとめた。こちらの報告書をよく読んでみたところ……、
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf


はじめに
近年、金融を巡る環境は大きく変化している。(中略)
こうした者の出現や低金利環境の長期化等の状況と相まって、金融機関は既存のビジネスモデルの変革を強く求められている状況にある。


 こうはじまる40ページ超の報告書は、私の読解力では「私たちの老後」を案じたふりをしながら、いかに「銀行さん」が生き残るかを模索したものでしかなかった。

 安倍首相は10日、「(金融庁の報告書)は不正確であり、誤解を与えるものだった」と釈明したけど、誤解する余地などなかった。ただただ、年金制度を破綻させてしまった「国の責任」を、銀行さんをもうけさせる仕組みを国が推奨することでうやむやにしようとした。「老後はキミたちで。ひとつよろしく!」としか思えない内容だったのである。

 と同時に、「資産運用のすすめ」に至る前提が、どれもこれも微妙で。とにもかくにも読みものとして一見の価値はあるものだったので今回は、件の報告書をもとに「超格差社会の責任」についてあれこれ考えてみようと思う。

 まずは報告書の内容から(以下、抜粋して要約)

  • 【長寿化】
  • ・1950年ごろの男性の平均寿命は約60歳、現在は約81歳。現在60歳の人の約4分の1が95歳まで生きるという試算もあり、まさに「人生100年時代」。

  • 【認知症】
  • ・2012年の65歳以上の認知症の人は約7人に1人。軽度認知症の人も合わせると65歳以上の4人に1人が、認知・判断能力に何らかの問題を有していることになる。
  • ・2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になる。

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