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(写真=shutterstock)

 今回は「信頼と責任」について、あれこれ考えてみようと思う。

 トヨタ自動車の豊田章男社長の「終身雇用決別宣言」が、物議をかもしている。日本自動車工業会の会長として行った記者会見で、「今の日本(の労働環境)を見ていると雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と指摘し、「現状のままでは終身雇用の継続が難しい」との見解を明かしたのだ。

 トヨタ自動車といえば、3月期の連結決算(米国会計基準)での売上高が前年比2.9%増の30兆2256億円となり、日本企業として初めて30兆円を超えた名実ともに日本を代表する企業である。

 が、実際には日本の企業であって日本の企業ではない。国内生産のうち半分以上は輸出だし、トヨタ本体の社員数はすでに日本人よりも外国人のほうが多い。

 つまり、トヨタは「MADE BY TOYOTA」というフレーズが象徴するように、グローバル企業であり、先の豊田社長の言葉を私なりに翻訳すると、

 「あのね、グローバル的には“終身雇用”という概念はないの。日本人だけ雇用し続けるっておかしいでしょ? だからさ、日本人の社員も、“〇〇歳まで会社にいられるし〜”とか思わないでね」
ということなのだろう。

終身雇用はもう限界

 いずれにせよ、終身雇用を巡っては、経団連の中西宏明会長も(日立製作所会長)も7日の定例会見で、「企業からみると(従業員を)一生雇い続ける保証書を持っているわけではない。制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発言。

 経済同友会の桜田謙悟代表幹事も14日の記者会見で、「昭和の時代は、大変よく機能したと思う。ただ、経済そのものが大きく変革してしまった中で、終身雇用という制度をとらえるとすれば、やはり『制度疲労』を起こしている可能性があるので、もたないと、わたしは思っている」と述べるなど、今月に入って立て続けに終身雇用決別宣言が頻発している。

 相次ぐ経済界のトップ中のトップの重鎮たちのコメントに、
「その前に賃金を上げろよ!」
「役員報酬減らせばいいだけだろ!」
「この人たちみんな終身雇用の恩恵を受けた人たちだろ!」
「結局は安い賃金で、若くて、使い勝手のいい社員が欲しいだけだろ!」
と批判が殺到している。

 残念ながら終身雇用は“絶滅危惧種”から“絶滅種”になる。

 10年以上前から企業は「希望退職」という名のリストラを行い、定年前に役職定年という「予期的期間」を設け、「セカンドキャリア研修」という名の肩たたき研修を行い、終身雇用脱却を狙ってきたけど、今回の発言で明治時代に起源をもち、昭和期に甘美な香りを漂わせてきた「終身雇用」は死滅するのだ。