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 将来が混沌とする社会状況を鑑み、定年まで「死んだふり」をする会社員は増殖しているし、「終身雇用を前提とした会社の正社員になりたい」という若者も増えた。会社にい続けること、会社員でいること自体を目的とする「会社員という病」にかかっている人たちがこの数年で増えたとも感じるからである。

 独立行政法人労働政策研究・研修機構の「第7回勤労生活に関する調査」(平成28年)によれば、「終身雇用」「年功賃金」を支持する者の割合は、調査を開始した1999年以降、過去最高の87.9%に達している。「組織との一体感」「年功賃金」を支持する割合もそれぞれ、88.9%、76.3%と過去最高で、特に20~30歳代で、「終身雇用」「年功賃金」の支持割合が2007年から急激に伸びた。

 また、1つの企業に長く勤めて管理的な地位や専門家になるキャリアを望む者(「一企業キャリア」)の割合は 50.9%。2007 年調査では年齢階層別でもっとも支持率が低かった 20歳代が、半数を超え54.8% と、もっとも高い支持率となった。

 時系列に見ると、「一企業キャリア」を選択する割合が ゆるやかな上昇傾向を示す一方、「複数企業キャリア」「独立自営キャリア」を望む割合は低下傾向を示していた。

 長期雇用を望む人が増えること自体に問題はないが、長く雇用されるには自らにも「責任」を果たす必要があることをわかっているのか? とちょっとばかり疑問なのだ。

雇用される側にも「責任」が生じる

 長期雇用は健康社会学的には「職務保証(=job security)」と呼ばれ、
職務保証とは、 第1に、「会社のルールに違反しない限り、解雇されない、という落ち着いた確信をもてる」 第2に、「その働く人の職種や事業部門が、対案の予知も計画もないままに消滅することはない、と確信をもてる」 と働く人が感じることで成立する。

 真の職務保証とは、「今日と同じ明日がある」という安心であり、自分も「ルールに違反しない」という責任を全うすることが必要不可欠。

 にもかかわらず、責任を放棄し「〇〇歳まで会社にいられる」と“かりそめの安心”に身を委ね、働き方改革を逆手にちょっとでもプレッシャーをかけられようものなら、パワハラだの、ブラック企業だのと企業側を批判する輩も存在する。

 今の日本企業に本当に必要なのは、企業と働く人が「信頼と責任」でつながること。そのためにも、企業側は働く人に「あなたは我が社にとって大切な人」というメッセージを送り続けてほしい。

 職務保証は、経営者が働く人を尊重し、「人」と接することで機能する心理的契約である。

 今回の経済界たちの重鎮の「終身雇用決別宣言」が、企業と働く人たちがもう一度「真の職務保証とは何か? それを実現するには何をすればいいのか?」という問題意識につながればいいなぁと、切に願っている。

『他人の足を引っぱる男たち』(日本経済新聞出版社)


権力者による不祥事、職場に溢れるメンタル問題、
日本男性の孤独――すべては「会社員という病」が
原因だった?“ジジイの壁”第二弾。
・なぜ、優秀な若者が組織で活躍できないのか?
・なぜ、他国に比べて生産性が上がらないのか?
・なぜ、心根のゲスな権力者が多いのか?
そこに潜むのは、会社員の組織への過剰適応だった。
“ジジイ化”の元凶「会社員という病」をひもとく。