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 たとえば、日本企業は「意思決定をしない」あるいは「意思決定が遅い」と酷評されることが多い。

「現地で検討されていることでも、日本は本社の役員会議のタイミングが優先され、検討は後回しになる。段々とこちら側もやる気をなくして、盛り上がっていた現場が沈滞する。裁量権を与えられてないマネジャーの存在意義がわからない。もっとリーダーとしての権限を与えないと日本企業は生き残れない」

 こういった話を、海外に赴任している人や、海外の日本法人に勤める人たちから、何度も聞かされてきた。

 現場に責任は負わせるけど、現場に裁量権は与えない。そんな組織風土も長期雇用の利点を相殺しているのではないか。

 あるいは日本企業は「ラインの決定事項ばかりが優先され、現場のプロフェッショナルの意見に耳を傾けない。専門スタッフと経営スタッフはパートナーなのに日本企業では上下関係。日本にはプロという概念がないのか」というボヤキも幾度となく聞いた。

 また、外資系は確かに業績が悪化すると「〇%リストラせよ」という指示が、トップから出されることがあるが、人事制度は日本の企業よりはるかに柔軟で、周りとの人間関係や信頼関係なども評価するケースが多い。働く人が「やりたい」と手を上げれば、それを徹底的にフォローし、教育に投資する制度もある。

 マネジメントに進むか、専門職に進むかの選択も早い時期に行われ、それぞれにきちんとした教育を行い、評価し、その成果を発揮する機会もある。定年制は年齢差別になるので存在しないが、長期雇用を前提としている企業は2000年以降、確実に増えた。

人材重視の経営が収益を生み出す

 長期雇用を悪の根源と考えるよりも、社員の能力形成への努力をしてほしい。なぜならどんなに先行研究を探しても「長期雇用が会社の生産性を下げる」エビデンスは見当たらないし、人材重視の経営が結果的に企業の収益を生み出す最良の選択であることは明白だからである。

 ただ、本当にただ、終身雇用廃止宣言に踏み切ったトップたちの気持ちも少しだけわかる。というか、経営側だけを責める気になれないという、正直な気持ちがある。