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 私は専業主婦未経験者だが、母は完全な専業主婦だったのでその「スゴさのハンパなさ」は痛いほどわかる。であるからして、今突然、専業主婦をやらなくてはならない事態に追い込まれたら……、泣く。「外でがんばって稼いでくるから許してくれ!」と悲鳴をあげるに違いない。

 主婦業とは、限られた時間とリソースで予測不可能な出来事に対処する仕事である。子どもの不意の病気や事故への絶えざる不安、隣人の気分や夫の帰宅時の機嫌など、様々な脅威と常に背中合わせで、いかなる異変にも対応できるだけの高度な判断力とマネジメント能力が求められる。

 つまるところ、専業主婦とは家庭の責任者として極めて多様なスキルが求められる職業であり、それは家庭外の活動と同じ、いやそれ以上に価値ある仕事だ。

 実際、イタリアでは主婦にはcasalinga(カサリンガ)という職業名がつけられていて、医師、警察官、ジャーナリスト、作家同様、プロフェッショナルな職業に分類されている。かつて主婦を軽視していた米国でも「stay-at-home dad(子育てに専念する父親、主夫)」がこの数年間で急増し、ケア労働の価値が見直されている。

 そもそも年金問題を語るのに「無職の専業主婦」というワードなど必要ないと思うのだが……。

 なるほど。どのレベルの「厚労省関係者」かは不明だが、「国策として妻たちからなんとかして保険料を徴収する作戦」を考える人たちの中には、専業主婦を「3食昼寝付きのお気楽な身分」といったシーラカンス並みの価値観が残っているということなのだろう。

 と、一気に記事内容に対する批判を書き綴(つづ)ってしまったが、この記事が出た背景には「専業主婦を安い賃金で雇いたい!」という思惑があると、個人的には考えている。

 何がなんでも「『第3号被保険者』の妻は約870万人(前述の記事より)」から「保険料を取りたい!」という国の執念と、人手不足解消に「専業主婦を労働市場に引き出したい」という企業の意向が合致したのではないかと。

 高度成長期に人手不足を補うために、専業主婦を安い賃金で「パート」として雇ったように、だ。

 念のために断っておくが、専業主婦の方たちが働くことに反対しているのではない。育児や家事で培った経験を生かし、活躍できる支援策は進められるべきだと考えている。

 だが、「無職の専業主婦」というワードと、「仕事の内容を問われることなく、低賃金・不安定な働き手として容認されてきたパート」がダブって仕方がないのである。「主婦は家族を養わなくてもいい存在(養えるだけの賃金は不要)」として扱われるような気がして、薄ら寒さを感じている。