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「会社の廊下でも、外の道路でも、真ん中を歩け!」

 それに拍車をかけるのが、“上”の超特権階級の会社員である。

 ある大企業に就職した学生が、研修会で「キミたちはえりすぐりのエリートだということを忘れないでほしい」と言われたと話してくれたことがある。「会社の廊下でも、外の道路でも、真ん中を歩け!」と。

 話を聞いたときは失笑してしまったけど、要は「キミたちは最上級の階層に属する人間である」と言いたかったらしい。

 っていうか、会社の廊下はまだしも、道路の真ん中歩いたら、車にひかれてしまうと思うのだが……。まぁ、そんなツッコミはこの際、脇に置いておこう。端的に言えば、会社のトップが自分の会社の新入社員に、「自分より“下”の属性をバカにしていい」とお墨付きを与えているのに等しい。

 会社の知名度や規模、収入や役職、社会的地位などの“外的な力”は、人の生きる力を強め、満足感を高めるリソースであり、それ自体は何ら悪いものではない。問題は、外的な力を過信、偏重するあまり、内的な力を高めるのをおろそかにしてしまうこと。

 本来であれば、絶好調なときほど、自分が恵まれた環境にいるときほど、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった“内的な力”、いわば人格の土台に磨きをかける姿勢を大切にしなきゃいけない。

 ところが、若いときから自分の給料では入れないような店を接待で使ったり、会社の名刺なしには会えない大物と接したり、下請け会社の年上の人から頭を下げられれば、外的な力を背景に、他者を軽んじるようになってしまう。そして、会社組織自体が、そうした姿勢をいさめ、修正する機能を果たせなければ、今回のような事件が起きても何らおかしくない。

 組織の目の届かないところで、圧倒的に弱い立場にある学生たちと社員が「個人的」に会うような行為を容認し、放置していたことを、今回問題になった企業はどう考えているのか? そもそも、弱い立場にある人間への配慮が、根本的に欠けている。

 今回の事件は男性社員によるものだが、これが女性会社員によるものだったとしても、当然、私の見解は全く変わらない。ここでしているのは、「男女」の話ではなく、立場の「上下」の話なのだから。

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