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下っ端にも広がる「何をやっても許される」感

 いずれにせよ、私は今回の事件にとてつもない憤りを覚えている。

 就職希望先の社員と学生という圧倒的に差がある力関係の中で性的な関係を強要するなど、まったくもって言語道断。会社側は「未来の自分たちの仲間」かもしれない学生を、もっとしっかり守る必要があるのではないか。

 今回の2つのケースがそうだったように、20代のひよっこ会社員がまるで「会社の採用担当者」のように振る舞い、「内定」という“人参”をちらつかせながら、会社の目の届かないところで学生たちと「個人的」に会うような行為を放置している事態は、まさに異常としか言いようがない。

 SNS上では、女子学生の“わきの甘さ”を批判する声もあったけれど、それは全くのお門違いだと思う。

 就職という大きな人生の節目で、学生たちはみな「ちょっとでもいい会社に入りたい」と必死だ。もちろん今の就活のあり方や、安定志向=大企業志向の高まりには、私自身異論はある。しかし、今回の事件はどう考えても悪いのは男性社員であって、女子学生ではない。

 学生たちの必死さを悪用し、「大企業の会社員」という身分を利用し、卑劣な行為に及んだ側の問題であり、犯行である。

 今回逮捕された男性社員たちは、企業名も出さず、個人の名前だけで、同じような卑劣な性的行為を女子学生に強要できただろうか? 自分が属する企業の社会的地位を、自分の価値と混同した末の悪事であることは紛れもない事実だろう。

 いつの時代も、そういうモラルなき横暴な振る舞いをするのは、決まって社会的地位の高い輩である。

 以前、米国のウーバーテクノロジーズで、215件ものセクハラやパワハラが疑われ、20人超が解雇されるという前代未聞の事件があった(関連記事:日本経済新聞「ウーバー、改革へ女性幹部スカウト セクハラ20人超解雇」)。当時のCEOトラビス・カラニック氏は「Aチーム」と呼ばれるハイパフォーマー軍団を側近にし、社長がお墨付きを与えたハイパフォーマーの横暴には人事部も手を出せず、黙認するしかなかったと報じられた。

 私がいた“業界”にもそういう人たちはいたけれど、大抵それは、そこそこの役職に就く、組織階層の上階の輩だった。

 そんないわゆる“特権階級”による「何をやっても許される」という“超勝ち組的トンデモ発想”が、大企業とはいえ、まだ20代の、組織内ではまだまだ下層の会社員にまで広がっているリアルを突きつけられ、私は薄ら寒い感覚に陥っているのである。