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きっかけはマッチングアプリ

 報道によれば、どちらも、就活中の大学生とOBやOGをつなぐスマートフォンのマッチングアプリで知り合ったそうだ。

 マッチングアプリは2017年ごろから急速に普及したもので、大手転職支援会社が自ら運営するものや、アプリ運営会社が就職情報会社との業務提携の下で提供しているものなどがある。やり方は実に簡単で、訪問を受ける側の社会人が登録すると自分の会社名や出身校が表示され、就活生がアクセス。条件が合えば個別にメッセージのやりとりが可能になる仕組みだ。利用料はなし。すべて無料だ。

 登録している社会人のほとんどは企業側が公認しているユーザーだが、一部、“非公認”のボランティアユーザーと呼ばれる社会人も含まれている。大林組の事件以降、ボランティアユーザーを中止したり、面談のガイドラインを作成したりと運営側も対応に追われているようだ。

 青春時代を“完全アナログ”で育った私の感覚では、たとえOB・OGといえどもアプリ上の情報だけで見ず知らずの先輩といきなり「会う」など到底理解できない。が、“完全デジタル”で育った若い世代にそんなわだかまりは一切ない。

 中には「セクハラっぽいことを書いてきたから、ヤバイと思ってアクセスするのをやめた」という学生や、「アプリは怖いと聞いたことがある」と敬遠する学生もいるが、ブラック企業を過剰なまでに恐れる学生たちにとって、気軽にOB・OGとコンタクトでき、本音を聞き出すチャンスを得られるアプリはどちらかといえばメリットが大きいツールなのだ。

 念のため断っておくと私はOB・OG訪問は賛成だし、自分が求める条件に合ったOB・OGとコンタクトを取れるアプリを利用すること自体は、悪いとは思っていない。

 しかし、これだけSNSを通じたトラブルが頻発するご時世であれば、もっと慎重な運営をして然るべきだったのではないか。「あとは本人同士でひとつよろしく!」「あとは企業さんの方でひとつよろしく!」的な“甘さ”が多分にあったように思えてならない。

 それ以前に、企業側は「自分の会社の社員が、その身分を利用して、“就活”をダシに学生と社外で会うこと」をどう考えているのだろう。

 大林組は逮捕が報じられてから約2週間後の3月6日に、「OB・OG訪問の際の当社社員の対応について」「リクルート活動における行動規範について」と題された文書をHP上に公表しているが、事件の詳細に関しては何も書かれていない。

 住友商事では事件後、リリース「当社元社員の逮捕について」を通じて謝罪したが、同社がくだんのマッチングサイトを運営する企業と提携し、約350人の社員が登録していた事実には一切触れていない(関連リリース「住友商事の社員 約350名が登録」)。