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厚生労働省は「2025年度には介護職員が約34万人が不足する」と推計している(写真=shutterstock)

 今回は「白い嘘」について、考えてみようと思う。

 北海道の自治体などが、「介護福祉士」を目指す外国人留学生に、年間250万円の奨学金を支給する制度を今春からスタートすることになった。

 昨年11月に東川町を含む3つの町と、東川町にある北工学園旭川福祉専門学校、8つの介護施設が外国人介護福祉人材育成支援協議会を設立。日本語学校などで日本語を学んだ留学生に、東川町内にある旭川福祉専門学校で2年間、資格取得を目指して学んでもらう。

 学費のうち8割を国が特別交付金の形で自治体に交付する制度でまかない、学費の残りの2割と生活費として年250万円程度の奨学金を協議会で負担。卒業後3~5年、協議会加盟施設で働けば返済は免除されるといい、現在、就学を希望している学生が約40人いるそうだ(関連記事「東川町、介護留学生に奨学金創設協議 20市町から参加」)。

 私はこれまでさまざまなメディアで「外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案」の問題点を指摘し、“現時点”での施行に反対してきた(「外国人は弱者? 「奴隷制度」を続ける企業の愚行」 「「日本が嫌い」になる外国人を増やす、穴だらけ改正入管法の欺瞞」 )。

 その気持ちに今も変わりはない。だが、今回の北海道の取り組みには、えらく感動している。すごい、ホントにすごい、と。

 メディアは「250万円」という高額な奨学金にスポットを当てているけれど、東川町では独自に10年も前から、地道に、取り組みを進めてきた。

 2009年から、介護人材育成などを目的に外国人留学生の受け入れをスタートし、14年からは町内の旭川福祉専門学校に日本語学科や留学生向け介護学科を開設。さらに、15年10月には全国初の公立日本語学校である「東川町立東川日本語学校」も開校した。

 そして、今回設立された協議会のモデルとなるべく、留学生が東川町の指定する介護施設で5年間働く場合、奨学金(2年間の学費を含め、1人につきかかる費用は約500万円)の返済は、同町が全額負担したのである。

 毎日新聞の取材に、東川町の松岡市郎町長が「コミュニケーション能力の高い介護人材を“育成したい”」と答えているが、「育成したい」という言葉は、手間と時間とお金と汗をかいてきたからこその言葉。「250万円」という数字の裏には、10年もの歳月をかけ、東川町全体が真剣に高齢化社会とそれに伴う介護人材不足に向き合ってきた誠実さがある。