人生後半戦の自由とは?

 「気が滅入り、落胆した状態。あるいはガソリンが切れて、モチベーションを失った状態であり、彼らは彼らの仕事に興奮を得られず、もし経済的に実行可能なら劇的なキャリア転換さえ夢見る時期である」――。

 これは米国の組織心理学者エドガー・シャインが、40代について評した有名な言葉だが、中年とは実に宙ぶらりんで、彼らの心理状態は「思秋期」「ミッドライフクライシス(中年期の危機)」「中期キャリアの危機」と表現されるなど、古くはユングやエリクソン、マズローの時代から「得体の知れない不安」に襲われるお年頃として研究が蓄積されている。

 5、6年前にはこの手の話は鉄板ネタだった。が、最近は不安にあえぐベテラン社員たちを憂うより、叩く方がウケる(すんません)。40代50代を対象とした大規模なリストラを数多くの大企業が敢行しようとも、せいぜいストレートニュースで軽く報じるだけ。

 将来不安がどの世代でも当たり前になったことが原因なのか?
 はたまた、“中年”の多くが思考停止に陥っているからなのか?
 理由は定かではない。

「っていうか、アンタがいつも叩いてるだろ?」

 こう口を尖らせている方もいるかもしれないけど、書いているものをよりしっかり読んでいただければ、「案外、おっさんたちがこの国の希望かもしれない」とあちこちで発言している理由がわかっていただけるはずなのだが……。まぁ、ここらへんについては、ここではこれ以上は書きません(笑)。

 いずれにせよ、これだけ平均寿命が延び、雇用も延長され、人手不足が呪いの言葉のように繰り返される今、「中年期にいかに“転身”するか」は、多くのビジネスマンにとって不可避な問題であることだけは確かである。

 なにせ年を重ねるにつれ、「これまで当たり前だった生活水準をいかにキープするか」「いかに自分の心身の衰えと向き合うか?」といった自己都合だけではなく、会社側からの“外的な事情”が引き金で転機を余儀なくされるケースが増え、今後はそういったケースが多くなるに違いない。

 おまけに何度も口を酸っぱくして言っているとおり、来年には成人人口の10人に8人が40歳以上で、10人中6人が50歳以上だ。にもかかわらず、ベテラン社員の評判は芳しくなく、「下手に経験を積んでいることが足かせになる」と断言する人までいる。

 というわけで、前置きが長くなった。

 今回は古くて新しい視点を交えつつ、「人生後半戦の自由とは?」というテーマであれこれ考えてみようと思う。そして、何を隠そう私もその1人ですので、50代は決して、かつて言われたような「喪失の年代」ではないことも期待を込めて書き綴ります。

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