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欧米に比べ「公務員が少ない国」ニッポン

 まずは、特別監察委員会による「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書」の概要から、気になった部分を抜粋する。

【事実関係】
・1996年以降、調査事業所数が公表より1割程度少なかった
・2004年1月以降、東京都の規模500人以上の事業所を抽出調査にしたが、年報には「全数調査」と記載
・2004年~2017年まで抽出調査するも、集計上必要な復元処理が行われなかった
・2011年に変更承認を受けた調査計画に記載された内容どおりに調査が行われなかった
・2015年調査の事務取扱要領から、東京都の規模500人以上の事業所を抽出調査とする旨が不記載
・2018年9月にサンプルの入れ替え方法の変更に伴う数値の上振れの指摘を受けた際、統計委員会に、「復元を行う」としたことを説明しなかった

【関係職員の対応と評価など】
・課長級含む職員たちは、漠然と従前の扱いを踏襲
・部局長級職員も実態の適切な把握を怠り、是正せず
→統計調査方法の開示の重要性の認識、法令遵守の両方が欠如
・抽出率の変更担当からプログラム担当への作業発注・フォローアップの過程で連携ミスや誤りが生じやすい体制
→管理職は部下に任せきり
・サンプル数が多い県については統計上問題ないと担当が判断し、東京都と同じように実施しようとした
→課長級職員は法令遵守意識が欠如

 さて、と。記されている問題点は、本質的な部分で、冒頭で触れた文科省の報告書とかなり重複しているように思える。改めて経緯を整理すると異常としか思えず、これが私たちの生活を左右する官僚たちの実態かと考えると悲しくもなる。

 が、対象事業所数が減った1996年と、抽出調査になった2004年に注目すると興味深いことがわかる。

 1996年はバブル崩壊から約5年がたち、最大の政治課題が「行財政の構造改革」であった年。当時、橋本龍太郎内閣は消費税増税も含めた包括的なプラン作りに取りかかり、「行政改革・財政改革・社会保障改革・金融システム改革・経済構造改革・教育改革」の六大改革の方針を発表し、中央官庁のスリム化を進めた。

 以前、東京大学大学院法学政治学研究科の前田健太郎准教授の講義を受けたときに、「日本はどこよりも早く行政改革を行ってきた国」で、1960年代から始まったと教わった。1960年の7月に池田勇人内閣が発足し「経済で行こう! 所得倍増計画だ!」との方針で行政改革をスタート。イギリスが行政改革に着手したのは1980年代以降で、その他の欧米諸国もだいたいこの時期なので、20年ほど先行していることになる。

 その結果、何が起きたのか?

 欧米に比べ「公務員が少ない国」になったのである(ここでの公務員とは公的部門で働く人々の数)。

 実は戦前の日本は、公務員が多すぎる国だった。

 役人の数は、仕事の量とは無関係に増え続けるという「パーキンソンの法則」に加え、以前の日本は官僚の政治的権力が強い、いわば「官僚天国」。その結果、他国より無駄が多く財政赤字が深刻とされていた。その無駄をなくそうと行政改革が始まったので、日本は公務員を増やさなかった。通常、経済成長に伴い公務員は増えるものだが、日本は公務員を増やさないことで無駄を省こうとしたのだ。

 「日本は公務員を『減らす』のではなく、『増やさなかった』国。増やさないことで、コストを押さえ込んできた」(by 前田先生)