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「ムリ!」な制限から生まれる解決策もある

 そもそも、ルールを現実に合わせることが必ずしも正しいとは限らない。

 むしろ「ムリ!」というような制限を設けるからこそ、現実の問題が解決されることの方が多い。それだけの知能を人は身につけている。同じ医療現場でも、子育てもしながら生き生きと働く女性医師の多い病院だってある。

 とどのつまり「患者さんのため」という美しい言葉で医師の世界を美化し、「あとは現場でよろしく!」と高みの見物をしているとしか思えないのである。

 東京都内の公的医療機関の産婦人科に勤務していた男性医師(30代半ば)が2015年7月に自死したのは、時間外労働が月170時間を超えるなど長時間労働が原因だった。これは、残業の実態を以下のように記した方が、その異常さがはっきりと「見える」かもしれない。

1カ月前(6月12日-7月11日) 173時間20分
2カ月前(5月13日-6月11日) 165時間56分
3カ月前(4月13日-5月12日) 143時間24分
4カ月前(3月14日-4月12日) 148時間19分
5カ月前(2月12日-3月13日) 208時間52分
6カ月前(1月13日-2月11日) 179時間40分

 死亡前の6カ月間の休日は5日のみ。それでも男性医師は気丈に振る舞った。ボロボロになりながらも周りから気づかれないように、患者さんのために命を削ったのだ。

 もし、上司に「時間を管理する」という当たり前の認識があれば、彼を救うことができたんじゃないのか?

 2016年1月には、新潟市民病院で後期研修医として働いていた女性医師(死亡時37歳)が命を絶ったときも、時間外労働は異常さを極めていた。

 電子カルテの操作時間やセキュリティカードの入退室時間、車での通勤に使っていたETC記録、手術記録などから残業時間を算出したところ、最長で月251時間にも達していたのだ。

 が、自己申告の残業記録では月20-30時間程度。この誤差は何に起因しているのか。組織の上階を陣取る“お医者さま”は、ほんの一瞬でも想いを巡らせたことがあるのだろうか。医師の仕事の中には看護師さんに任せられるのにそれを任せないケースや、「36協定」すら理解していない医師も多いと聞くけど、そのことももっと問題にすべきではないのか。

どれだけ「生きがいを持って」仕事をしようとも、「誇りを持って」いようとも、長時間労働をすれば心身はダメージを受ける