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 阿蘇山が噴火した。
 第一報に触れて、私はたいそう驚いた。
 過剰反応したと申し上げた方が正しいかもしれない。
「え? 阿蘇山?」
 一瞬だが、
「ああ、ついにラスボスが動き出したか」
 という感慨が押し寄せてきた。
 もちろん
「あの山が本気を出したらいよいよこの国もおしまいだぞ」
「選挙どころじゃないぞ」
 と、真正直にそう考えたわけではない。そこまでナイーブではない。
 とはいえ、私はかなりあわてて情報収集に走っていた。
 少しはしゃいでいたかもしれない。
 私が阿蘇山の噴火に強い反応をした理由はふたつある。
 ひとつは、この8月に《「プリニウス」(ヤマザキマリ、とり・みき著)新潮社》という漫画を電子書籍で入手したからだ。
 現時点で既刊となっている分(1~11巻)はすべて読了している。
 あまり体調の良くなかったこの夏を乗り切るのに貢献してくれた作品だ。
 内容は、火山活動に魅了されたプリニウスという男が、最終的にヴェスヴィオ山の噴火で命を落とすまでの生涯を中心に、当時のローマを行き過ぎた人物(ネロをはじめとする皇帝やその妻などなど)との関係や、周辺地域の風物や自然を描いた大作だ。ストーリーは、錯綜している。というよりも、時系列や人物の関連が自在に描かれている。なので、簡単に要約して紹介することは、できない。
 プリニウスという人物についても同様で、数行で要約することは不可能だ。
 絵と文章を総動員して説明しても、たっぷり11巻は必要な人だと思う。
 プリニウスが魅了されていたのは、火山活動だけではない。
 彼は、自分をとりかこむあらゆる事象(動植物、鉱石、星座や惑星の運行、気象、地震といった自然現象とそれらにまつわる伝承)に対して強い探究心を抱いた。であるから、採集できる標本を求めて各地を逍遥した。あわせて、書物を収集し、思いつきを書き留め、それらのすべてを後世に残そうとした。
 われわれは、その後世を生きている。
 とすれば、阿蘇山の噴火に興奮しないわけには参らぬ。

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