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 7月にはいって間もなく、神戸市をはじめとするいくつかの自治体が、新型コロナウイルスのワクチン接種予約を取り消す方向で検討しているというニュースが届いた。
 私は、頻々と伝えられて来る似たような記事の見出しを眺めながら、しばらくの間、起こっていることの意味を理解できずにいた。
 予約をめぐって事務の混乱が生じているのか、それとも、各自治体が、ワクチンの打ち手に当たる医療従事者を確保できなくなってきているということなのか、あるいは、もっと根本的な次元で現場が混乱しているのか、あれこれ考えてはみるものの、真相はわからない。
 と、7月6日に配信されてきたニュースで、謎が解けた。
 河野太郎行政改革担当大臣が、新型コロナウイルスのモデルナ社製ワクチンについて、日本への6月末まで(第2四半期)の供給量が当初計画の4000万回分から1370万回分へ約6割減っていたことを明らかにしたのである。

 なるほど。要はタマ不足だったわけだ。
 肝心要のワクチンの供給が途絶えているのであれば、接種計画がスケジュール通りに進まなくなったのは当然だ。極めてロジカルな帰結だ。

 とはいえ、このニュースは
「ああそうでしたか」
 と聞き流して良い話ではない。
 まして納得できる話でもない。
 ニュースを知って、私が、まず疑問を抱いたのは、政府が、現時点で、ワクチンの保有量を明示しているのかどうかについてだった。
 これは、シンプルな疑問ではあるのだが、実際に調べてみると、シンプルな答えにはなかなかたどり着くことができない。

 実際、「ワクチン保有量」で検索してみても、当該の数字は出てこない。
 厚生労働省のリリースをひと通り調べてみても、見当がつかない。
 無論、私が、自分なりに調べてみた結果、「ワクチン保有量」の数値にたどり着けなかったのは、単に私の調査能力が貧弱だったからだと考えるのが妥当なのだろう。それなりの検索力と取材力を備えた人間が調べれば、正確な数字を見つけ出すことは、さしてむずかしい課題ではなかったのかもしれない。
 たとえば、腕利きの新聞記者や専門的な知識を持つジャーナリストなら、こんな仕事は朝飯前だったりするのだろう。
 でも、私は、これまでのところ、政府が確保している現時点でのワクチンの量を、報道を通じてであれ政府の公報を通じてであれ、一度も見たことがない。
 ということは、ワクチンの保有量は、少なくとも一般国民が簡単にわかる場所には明示されていない、と、そう考えて差し支えないはずだ。

 もう少し大雑把な数字は、この春からこっち、様々な経路を通じて繰り返し伝えられている。
 たとえばこれなどがそうだ。
契約協議中も含めてワクチン5億6400万回分確保 配送本格化

 これは、東京新聞が5月22日付の配信で伝えた情報だが、これによると、
《政府が確保した新型コロナウイルスワクチンは契約協議中も含めて5億6400万回分に上る。自治体は接種体制を整えつつあり、今月から市区町村向けの配送が本格化している。》
 てなことになっている。

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