先週は体調不良で執筆を休んだ。(←「お休みをいただいた」という書き方はしない。フリーランスで働いている人間にとって、「休み」は「いだたく」ものではないからだ。ついでに言っておくと、休載について、読者に謝罪するようなものの言い方もしないつもりだ。理由は説明しない)。
 現在、体調は回復している。
 これ以上の説明はしない。今後も、自分の体調や健康に関連する情報をお知らせするつもりはない。理由は、読者(の一部)を信用していないからだ。

 悪意を抱いている読者は、書き手の健康情報を悪意ある形で拡散する。
 事実、二年前に脳梗塞を発症したことをうっかり当欄に書いたところ、以来、その話をネガティブな情報として触れ回る人々が後をたたない。

 具体的には
「オダジマは脳梗塞の後遺症である高次脳機能障害らしい」
「オダジマは脳に問題をかかえている」
「オダジマはどうやら深刻な疾患を発症している。その影響が書くものにもあらわれている」

 てな調子の噂を流す人々が継続的に出没しているということだ。

 噂は、ツイッターのタイムラインにリプライの形で流れて来ることもあれば、寄稿している媒体のコメント欄に、まことしやかな情報として書き込まれることもある。編集部に直接メールで届けられるケースもある。
「いつまで脳の機能に欠陥のある書き手を使い続けるつもりなのですか」
 と。これは本当の話だ。

「人の噂は75日というが、ネット上の噂は75時間もあれば消える。だから、過剰反応すべきではない」
 てなことを言っている人もいるようだが、私は必ずしもそう思っていない。
 たしかに、ネット炎上という現象自体は、3日もすればおおむね沈静化する。攻撃的な書き込みの数も、75時間後には10分の1以下にピークアウトしているケースがほとんどだろう。

 しかしながら、ひとたび炎上したネタは、永遠に蒸し返される。このことを忘れてはならない。
 私が経験した範囲内の話だけでも、真偽ないまぜの(←ほとんどは根拠のないデマなのだが)ネットロア(←ネット上で拡散している噂話)は、ほかの何かについて炎上に近い騒ぎが勃発する度に、何度でもよみがえることになっている。そして、それらの悪意に満ちた情報は、コピペされ、拡散され、もう一度アタマに戻って反復再生される。この運動は防ぐことができない。

 だから、私はインターネット上の悪評については
「人の噂は75カ月」
 くらいに見ておくのが相場だと思っている。
 たぶん、75年後には、噂の対象となった人間も、噂を流して騒いでいた連中も、生きてはいないはずなので、それを踏まえたうえで申し上げるなら
「人の噂も75年」
 と見積もっておくのが、賢明な人間の処世ということになる。

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