5月11日付の全国紙3紙の朝刊に、宝島社による見開き2ページの企業広告が掲載された。
内容は、戦時中の子どもたちの軍事教練と思われる写真に
「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される。」
という文言を添えて、政府の新型コロナウイルス対策を批判したものだ。
この広告を紹介した東京新聞の記事は
《ツイッターでは「こういう声がもっと上がってくるのでしょうね」などと共感が集まっている。》
という言葉で締めくくられている。
たしかに、ツイッターの世界を眺めてみると、共感や賛同の声が目立つ。私のタイムライン上にも、この宝島社による新聞広告を引用しつつ、連帯の言葉を添えたツイートがいくつか流れてきている。
しかし、相手は広告だ。
うっかり鵜呑みにするわけにはいかない。
広告を評価する際には、
「どんな企業が」
「どのようなターゲット層に向けて」
「いかなる狙いを持って」
発信した情報であるのかを仔細に検討して、それらの周辺情報コミで、総合的に読み解かないといけない。
別の言い方をするなら、広告文案の中に書きこまれている言葉の表面上の意味をいったん留保した上で、普通の記事や文章を読む時とは別の、ひとまわり底意地の悪い読み方で行間を解釈しに行かないと、正解にはたどりつけないわけで、つまり、ボディコピーの文言をそのまま鵜呑みにする読み方は、21世紀の企業広告を受け止める態度としては、いささかナイーブにすぎるということだ。
で、朝日新聞は、件の見開き広告が掲載された翌日の紙面で、「広告主の意図」にフォーカスした記事を配信している。
なかなか行き届いた仕事ぶりだと思う。
とはいえ、私は、この記事もやはり、鵜呑みにするわけにはいかないと考えている。
というのも、これは、広告の媒体である新聞社が、ほかならぬ自分たちの広告主である企業への取材をもとに書き起こした記事だからだ。
もちろん、取材先が広告主だからという理由で、即座に
「記事広告」
「パブ記事」
「提灯記事」
であると、決めつけようとは思っていない。
しかしながら、一読した限り、当該の記事が踏み込みの甘い仕事である印象は、ぬぐいきれない。
以下にその理由を述べる。
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