大型連休は一段落したが、それでも日常は続いている。
 「ショー・マスト・ゴー・オン」
 という感じだろうか。
 いや、ちょっと違うな。われわれの日常はショーではない。
 調べてみると、
“The show must go on”
 なるフレーズは、英語では慣用句らしい。ちなみに『ランダムハウス英和大辞典第2版』(小学館)は
《((俗)) ショーは続けなくてはならない(いまさら後へ引けない,人々は私たちがこれをすることを当然だと期待している)》
 という訳文を載せている。

 なるほど。含意は
 「一度始めたことはなにがなんでも中止できないぞ」
 といったあたりにあるようだ。
 してみると、昨今話題のオリンピックゲームズは、ショービジネスだったのかもしれない。そう考えると色々と腑に落ちる。

 ところが、このたびの緊急事態宣言にともなって、マスト・ゴー・オンたるショービジネスの本場の劇場や映画館には、お国からの休業要請が出ている。でもって、この連休中、都内のシネコンや大型の劇場はいずれも閉鎖されている。のみならず、都内に4つある寄席(←加藤勝信官房長官はこの「寄席」という文字を「よせき」と読み下したのだそうですね)も休業中だ。
 一方、東京五輪・パラリンピックのための聖火リレーや札幌でのマラソンの試走は、つつがなく敢行されている。
 オリパラの本大会も、世界中から何万人もの選手や役員を招いた上で大々的に開催されることになっている。
 なんだかパラレルワールドのできごとみたいだ。
 私は夢を見ているのだろうか。

 エドガー・アラン・ポーの詩の中に
“Is all that we see or seem
But a dream within a dream?”
 というフレーズがあったことを思い出す。

 この詩句の意味は、おおよそ
 「私たちが見ている、あるいは私たちの目に見えているすべてのものは、夢の中の夢にすぎないのだろうか」
 といったあたりだろう。
 オリンピックはすでに、夢どころか、夢の中で見る夢に近い。それも悪夢に似てきている。できれば醒めてほしい。

 そんな中、憲法改正国民投票の利便性を高める国民投票法改正案が、自民、公明、立憲民主各党などの賛成多数で、衆院憲法審査会で可決した。で、これを受けて、今国会の会期内に成立させる見通しであるらしい。
 悪夢みたいだ。
 われわれは、醒めない悪夢の中で暮らしているのだろうか。

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