この原稿は、いわゆる「ゴールデンウィーク」中に記事としてアップされることになっている。
 なので、今回は「休み」についてあらためて考えてみたい。
 最初に「ゴールデンウィーク」というこの言葉の使われ方についてお話ししておく。

 ご存知の通り、NHKの放送原稿の中では「ゴールデンウィーク」は使われない。理由は、この言葉が商標登録されているからなのだそうだ。
 で、NHKは、代わりに「大型連休」という言葉を使っている。
 最近では、こっちの言い方(←「大型連休」というどことなくよそよそしい用語)のほうが一般的になってきている気配がある。
 あるいは、令和のヤングピープルは、「ゴールデンウィーク」という言葉の浮ついた語感を恥ずかしく感じているのかもしれない。
 たしかに、「ゴールデンウィーク」なる言葉の、昭和くさい、和製英語丸出しの、安ピカで軽佻な語感は、若い世代の人々の休日観とは合致しないだろう。

 似たような言葉に
「アベック」
「デート」
「ビフテキ」
 といったあたりの化石カタカナ用語がある。
 いずれも、戦後の日活青春映画の中で頻発された裕次郎スタンダードの日本語で、いまとなってはナマで口に出すことがはばかられるカビカビ風俗用語でもある。

 で、思うのだが、今回のゴールデンウィークをめぐるゴタゴタは、この言葉に最終的なトドメを刺す結果をもたらすだろう。40歳より若い世代の日本人は、すでにずいぶん以前から、全国民が一斉に休みをとって同じタイミングで観光地に出かける社会性昆虫じみた連休の過ごし方に、そこはかとない忌避感を抱いている。
 であるからして、昨年展開されていた「GoToトラベル」ならびに「GoToイート」のキャンペーンは、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念する気分とは別の文脈においても、若い人たちには著しく評判が悪かった。

 「これって、あからさまな愚民慰安策じゃね?」
 「だよな。われこそは愚民なりと、自分で認めてる人間以外はうっかり申請できないはずなんだけど、愚民ってそういうの恥ずかしくないのかな」
 「恥ずかしくないから愚民なのだよ」
 と、さんざんに揶揄嘲弄冷笑罵倒していたと聞く。
 にもかかわらず、おどろくべきことに、政府はいまだにGoToキャンペーンをあきらめていない。
 いったいどこまで民心を読み誤っているのだろうか。

 

 為政者という人たちは、いつしか国民をどうにでもコントロール可能なビッグデータであると思いこむようになるものらしい。
 だからこそ彼らは、「自粛要請」や「休業依頼」や「ウィズコロナ東京かるた」や「ポピドンヨードうがい薬宣伝キャンペーン」みたいなあからさまな飴と鞭のインセンティブで住民を操ろうとする。
 たぶん、彼らの目には、民衆は、ある種の昆虫みたいに見えている。

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