大阪の新型コロナウイルス感染状況がひどいことになっている。
 通常、私の予測は当たらないことのほうが多い。というよりも、社会的なできごとに関しては、必ずやハズれることになっている。
 ところが、今回のこの事態に関しては、2月の段階から懸念していた通りの展開になっている。つまり、先読みがドンピシャリで的中しているわけだ。これは、とても珍しいケースだ。

 予測が当たってうれしいのかというと、無論、そんなことはない。
 むしろ、先行きを考えて、憂鬱になっている。
 というのも、話題の「まん延防止等重点措置」の内容の薄さにあきれているからだ。
 「マンボウ」という4音節略称の軽佻さについては、いまさら指摘するまでもない。より深刻なのは、その薄っぺらな響きの四文字略称を早い時期からマスメディアの中で連呼し続けていた電波有識者たちが、一向に発言力を失っていないことだ。
 「マンボウ」を推し進めている人々は、例によって、飲食店やライブハウスのような営業店舗に負担と自粛を求めている。お国からしてみれば、店舗の経営にたずさわっている人間たちは、風営法その他の法律や条例でコントロールしやすい相手に見えるのだろう。

 一方、この2月に施行された「新型コロナウイルス対策改正特別措置法」は、行政権力に一般国民への強制を許していない。
 もちろん、このこと自体は、当然の歯止めとして、評価せねばならない。たとえ非常時であっても、お国や行政権力に国民の行動を制限する権限を安易に持たせてはならないからだ。

 しかしながら、それはそれとして、政府や地方自治体が、店舗や劇場やライブハウスにばかり時短営業や自粛を求めて、それらの店舗の顧客に当たる一般国民の行動制限に言及しようとしないのは、バランスを欠いていると思う。

 もっとも、国や自治体が、昨年来
 「不要不急の外出を控えてほしい」
 という呼びかけを、ことあるごとに繰り返していることは確かだ。このほか
 「三密を避けろ」
 「手を洗え」
 「マスクをしろ」
 といったあたりについても、具体的な言葉で協力を依頼している。

 ところが不思議なことに、彼らは
 「同居家族以外の人間との会食の禁止」
 や
 「4人以上での会食の禁止」
 のような、具体的かつ実効的な指針はついぞ打ち出さない。
 代わりに
 「マスク会食」
 などという、非現実的な会食方法を提案するにとどまっている。

 私は、このことが不思議でならない。なので  「どうしてお国は、飲食店にばかり時短営業を求めて、客の側の飲食店利用のあり方(つまり会食方法)を制限する措置をとらないのだろうか」
 と、昨年の緊急事態宣言の時から、ずっとそう考えていた。
 実際、店舗に対して午後8時なり9時なりでの閉店を求めることよりも、客に対して多人数での会食の自粛を促したほうが、ウイルス感染の防止には、ずっと効果的であるはずではないか。
 店舗にしてみれば、一人客や二人客であっても、時間を問わずまんべんなく来店してくれるのであればそっちのほうがしのぎやすいはずだし、また、深夜に外食をせねばならないトラックドライバーや夜勤の人間にとっても、一律に時間で閉店されるよりは、人数制限を設けてもらったほうが対応しやすいはずだ。

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