スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」(WEF)が3月31日に公表した「ジェンダーギャップ指数」の年次報告書によると、日本の男女平等の達成率は65.6%で、ランキングでは、世界156カ国中で120位に相当する

 ここまで書いてみてあらためて気づいたのだが、当欄でジェンダーないしは男女格差の話題を扱うのは、前回から2回連続になる。
 そうでなくても、ここのところフェミニズム関連の話題をとりあげるケースが増えている。

 「オダジマはフェミ推しに転向したのか」
 「あいつもめんどうくさいヤツになっちまったなあ」
 と、そう思っている読者もいらっしゃることだろう。
 コラムニストとして自覚しておかねばならないのは、
 「フェミニズム関連の話題は一般受けしない」
 ということだったりする。もう少し踏み込んだ言い方をすると
 「フェミの話題を持ち出すと、つまらない書き手だと思われる」
 のである。
 問題は、ここにある。

 つまり、女性差別やジェンダー平等に関連する話題は、いまなお
 「ユーモアを解さない堅物向けの味気ないお話」
 「ギスギスした人たちが好む炎上案件」
 「いつも怒っているあの人たちがなにかにつけて声高に主張しているやたらと対立的な論題」
 であると受け止められているわけで、このことが、この問題の扱いを困難にしているわけだ。
 もっとも、この見方は、かなりの部分、メディアの人間たちによる一方的な「思い込み」を含んでいる。

 どういうことなのかというと、
 「フェミニズム関連の話題は一般受けしない」
 という前提自体が、実は、フェミニズムの問題を扱うことをめんどうくさく感じているメディア関係者が、勝手に言い張っている憶説であるのかもしれないということだ。だとすると、メディアの中の人々は、視聴者がフェミニズム関連の話題を嫌っていると決めつけることで、むしろこの話題を扱わずに済ませる口実を共有している、と、そう考えることも可能になる。

 ともあれ、「場の空気」を重んじる合意形成第一主義の日本人たちは、「ジェンダー」という言葉が出てきた瞬間に表情を曇らせる。
 というのも、ジェンダー平等への賛否以前の前提として、その種の「めんどうくさい」話題を回避することこそが、会議を円滑に運営するための最重要なライフハックとして学習されているからだ。

 会議のメンバーが共有しているジェンダー問題への忌避感は、
 「メシ食ってる時に便所掃除の話なんかするなよ」
 的な、ある種の「マナー」に通底する感覚でもある。
 フェミニズム関連の話題は、人々が集まる場所では
 「場違いな」
 「トゲトゲしい」
 「場の雰囲気を台無しにする」
 話題として、敬遠される。
 「女だけで言ってろよ」
 と、口にこそ出さないものの、彼らは内心ではそう思っている。

 なぜかって?
 理由なんかないよ。あるはずがないじゃないか。
 だってそうだろ? そもそも「マナー」というのは、理由を説明する必要のない作法を指す言葉だぞ。わかってるのか?

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