目を覚まして、パソコンの電源を入れたら、アメリカの連邦議会がトランプ支持者によって占拠されている。なんということだろう。
 そんなわけで、流れてくるニュース動画を眺めつつ、この2時間ほど、びっくりし続けている次第なのだが、さらに驚くべきなのは、もう昼近くになるというのに、私がびっくりする以上の感想を思い浮かべられずにいることだ。

 ちょっと前に
 《トランプ関連の記事は、何を信用して良いのやらわからない。とりあえず英語メディアの記事をDeepL翻訳経由で読むのが安全っぽいとはいえ、うっかり鵜呑みにはできない。日本人の書いた日本語の記事は、どんなバイアスがかかっているのやら見当もつかない。こんなにわからないのははじめてだ。午後6:04 - 2020年12月27日
 というツイートを投稿したのだが、その時点から、私の脳内は更新されていない。アメリカの民主主義が明らかに深刻な危機に瀕しているというのに、私は、いまもって事態を掌握できずにいる。ともあれ、現今の状況は、私が事前に準備していた情報や知識で処理しきれる範囲を超えている。

 鯵を釣るつもりで岸壁に腰掛けていたら、釣り針にダイオウイカが食いついてきたみたいな場面を想像してみてほしい。私は、釣果を考える以前に、自分の身の安全を心配せねばならない事態に追い込まれている。

 とんでもないことが起こりつつあることは、とりあえずわかっている。
 しかし、わかっているのはそこまでで、その先の見込みについては、何の考えも浮かばない。なので、解釈は、当面、棚上げにしておくつもりでいる。いずれ、半月もすれば、いま私のアタマの中を行ったり来たりしている、どっちにしても突飛な見方とは別の、もう少しマトモな読み解きのスジが見えてくるかもしれない。原稿を書くのは、その時まで待っても遅くない。

 いずれにせよ、私のような、海の向こうから眺めているだけの傍観者が、ネット経由で拾い集めた玉石混交のネタを材料に何かを書いたところで、ろくなことにならない。このことは、あらかじめはっきりしている。私は、高い確率で恥をかくことになるはずだ。
 トランプまわりの出来事を解釈することについては、すでに、幾人かの著名な言論人が、回復不能な赤っ恥をさらしている。私は、彼らの行列の最後尾につきたいとは思っていない。

 そんなわけなので、今回の原稿では、いま現在、世間を騒然とさせているタイムリーな話題から一歩離れて、当初とりあげるつもりでいた成人式についてのお話を書くことにする。こじつければだが、このテーマは、奥深いところで、アメリカで起きている出来事とつながっている。というのも、私が成人式を扱うにあたって想定している結論は、
 「群れる者は狂う」
 ということで、この結論は、ワシントンDCに集結したトランピストたちをとらえた動画にそのまま適用できる観察でもあるはずだからだ。

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