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 IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が15日からの4日間の滞在スケジュールを終えて帰国した。この帰国のニュースを、NHK(のNEWS WEBというウェブサイト)は、
 《IOCバッハ会長帰国へ 来年の東京大会開催へ成果》
 という見出しで報じている。
 まるで、五輪大会の広報ページそのまんまのヘッドラインだ。

 本文はさらに露骨だ。
 《東京オリンピック・パラリンピックの延期決定後初めて日本を訪れているIOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長がきょう帰国します。来年の開催を目指す東京大会に向け、菅総理大臣と「開催を実現する」という強い意思を共有するなど、成果を得る訪問となりました。―略―》
 と、冒頭からいきなりこんな調子だ。

 「どこの北朝鮮メディアだ?」
 という言い方が必ずしも上品でないことは承知している。
 でも、正直なところを申し上げるに、私は、この2年ほど、NHKのニュースページを見に行くたびに(TV電波経由のニュースはほぼ視聴していない)、同じ感慨に打たれる。
 「どこの北朝鮮国営放送だよ」
 と。

 彼らは、自分たちが政府なり五輪組織委なりの広報機関であることを隠そうとさえしなくなっている。

 ちょっと前に、そのNHKについて、ツイッター上に
 《amazonプライムの会員料金(月額500円)ならびにNetflixの月額料金880~1980円を基準に試算すると、NHKの放送受信料の適正価格は、150円程度だと思う。じっさいそのレベルのコンテンツしか流れてきていない。まあ、個人の感想だけど。
 午後3:27 2020年11月7日》
 という雑感を書き込んだ。
 このツイートには、現時点で3000件以上の「いいね」が寄せられている。

 思うに、この何の工夫もないベタなツイートが、多くの共感を招き寄せた理由は、むしろその内容が凡庸だったからだ。

 「あ、オレもそう思っていた」
 「それな」
 と、人々は、自分たちの内心を過不足なく代弁しているシンプルな言葉に、素朴な賛同を寄せてくれたわけだ。

 実際、NHKの放送受信料を割高に感じている日本人の数は、たぶん10年前の時点から比べて、少なくとも倍増しているはずだ。その理由は、必ずしも、海外資本の映像コンテンツ配給業者が低価格で良質のサービスを提供しているからだけではない。むしろ、NHKが配信しているコンテンツの品質が劣化していることに加えて、彼らの報道姿勢が信頼を失っているからこそ、その放送受信料が150円に見積もられてしまっているのである。

 もっとも、10年前の番組と現時点でNHKが提供している各種のコンテンツを虚心に比較してみれば、あるいは、質の低下というのは、こちらの思い込みに過ぎない可能性もある。実際には、彼らの制作物は、総合的・俯瞰的に見れば、向上しているのかもしれない。その点は認めても良い。
 ただ、20世紀のテレビ視聴者がNHKに対して抱いていた「特別な感じ」が、すでに泥まみれであるということは、この場を借りて、ぜひ関係各方面の皆さまにお伝えしておきたい。

 インターネットがまだ動き始めていなかった時代、NHKに限らず、地上波(衛星経由の電波も含めてだが)のテレビは、娯楽の王様でもあれば、報道の王子様でもあった。その中にあって、NHKはさらに別格の存在だった。
 放送電波の中にCMが挿入されないことのありがたさだけではない。予算規模や不偏不党の姿勢や、制作コンテンツの品質にいたるまで、すべての要素が民間の商売人たちとはまるで違って見えたものだった。